物語の町に悲運の夕顔が静かに眠る
【local news/京都・四条烏丸/まちの歴史/夕顔町】
烏丸通から高辻通を東へと歩きます。佛光寺を通り過ぎて堺町通を南に少しだけ下がるとそこが「夕顔町」です。
町名の由来は、平安時代に紫式部が書いた『源氏物語』に登場する女性の夕顔です。重い病を患って療養している乳母を見舞うためにこの地を訪れた光源氏は、貧しい家の垣根に咲く夕顔を見つけます。従者に花を持ってくるように命じると貧しい家から童女が出てきて「この上に花を載せてください」といいながら扇子を差し出しました。
光源氏が扇子を見ると、そこには一首の歌が書かれていました。
「心あてにそれかとぞ見る白露のひかりそへたる夕顔の花」
歌を読み終えた光源氏は、貧しい家で暮らす人物に興味を持ち返歌を贈ります。
「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔」
これが、光源氏と夕顔の出会い場面です。
後世、夕顔が暮らしたとされる場所に夕顔の墓がつくられ、江戸時代前期の絵図には「ゆふがを町」と記されているそうです。現在は町家の前に「夕顔之墳」と刻まれた石柱が立っています。物語の中で生きて亡くなった悲運の女性の名前が町名として現実の世界に残されている。これも京都の粋なのかもしれません。
【場所】
京都市下京区堺町通高辻下る夕顔町
2019年2月22日RT(2,485)