鳩居堂で感じた京の老舗の半端なさ
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御池通から寺町通を南に下がって行くと一筋目の北西角に鳩居堂があります。江戸時代に京都寺町の本能寺門前で薬種商「鳩居堂」を始めてから356年、今と変わらない場所で商いを続けてきました。
従来の本店は3月8日で閉店して建て替え、3月12日からは向かいにできた新店舗に移転して営業をしています。
鳩居堂のホームページに「『鳩居堂の屋号の由来について~鳩居堂記のおはなし~』というコンテンツがありました。それによると屋号の由来は、中国最古の詩集といわれる「詩経」の一節「維鵲有巣 維鳩居之」からとったと伝わっているようです。漢詩を訳すと「カササギの巣に鳩がいる」となって、要するに「借家住まい」ということを意味しているそうです。鳩は巣作りが下手なのでカササギの巣に平気で住むみたいです。
ある時、4代目の主人が、ある人に、「鳩居堂は既に4代、百余年にも亘って老舗として繁盛しており、自分の店舗もしっかり持って営業している。これを称して借家住まいという屋号は、おかしいではないか。」と尋ねられました。返答に困った主人は、親交のあった儒学者の頼山陽に助けを求めたそうです。すると山陽は、下記のように答えました。
「家であれ国であれ、自分一代で成ったものではなく先祖代々受け継いできたものです。謂わば先祖の家に借家住まいしているようなものであり、もともと自分のものではない。そもそも国家や商売が衰えたり滅びたりするのは、そのことを忘れて自分のものだと思い、過ちを犯すからで、先祖からの預かり物だと思えば決して疎かにせず、つぶれることもないのです。鳩居堂はその名の如く、店を自分のものと思わず慎み深くやっているからこそ繁盛しているのです」
閉店した本店に貼られた紙にこんなことが書いてありました。「これからの100年、また新たな景色を京都寺町に刻み、受け継いでいくことができればと思っております」「じっくりと時間をかけて、地域の人々に愛される店づくりを目指してまいります」
これまでの356年というとても長く重い歴史を背負いながら、これからの100年のことをじっくり時間をかけて考える。京都の老舗が持つ凄みと強さに触れた気がしました。
【参照元】
鳩居堂
http://www.kyukyodo.co.jp/about/history.html