海ノ民話の街に伝わる昔話「金樽いわし」

【宮津市の民話「天のかけ橋」と「金樽いわし」がアニメに!/京都ろーかるニュース】

宮津市が2021年度の「海ノ民話のまち」として認定され、地域に伝わる民話・伝承「天のかけ橋」と「金樽いわし」がアニメーション化されたようです。そこで、民話「金樽いわし」を紹介します。

 むかし、丹後の国に藤原保昌という殿さまがおりましたそうですわい。この殿さまは京都に長い間住んでおられたお方で、風流好みの殿さまだったという。

 ある夜のこと、殿さまは阿蘇の海に舟を浮べて月見酒をしていたと。「きれいな月じゃあ、京で見る月もなかなかじゃが、この海から眺める月はまた格別じゃ」いうて、上機嫌だと。
 呑むほどに、酔うほどに調子があがって、お供の者たちと謡いながら、「いよ― ポン。ポン ポポポン ポン」と、酒の入った金造りの樽を、鼓の代わりにして叩いておった。

 すると、金樽を叩く殿さまの舟の周囲にイワシの大群が押し寄せて来たそうな。殿さまが金樽を叩くとイワシまでが飛び跳ねて踊る。大喜びした殿さまは、一層ポンポコポンポコ金樽を叩いたと。舟辺りから身を乗り出すようにしてイワシをけしかけていたら、飛び跳ねたイワシが殿さまの顔に当った。そのはずみで、金樽を海に落としてしもうた。すると、今までいたイワシの大群は急に姿を消したと。

 次の日、漁師たちは殿さまの大切な金の樽を拾い上げようと網を引いた。金樽は見つからんかったが、かわりに何千何万匹ものイワシがかかった。漁師たちは大漁に大喜び。浜じゅう水揚げで賑(にぎ)わったと。イワシは殿さまにも届けられた。
 殿さまは「おお、なんとうまいイワシじゃ。浜が賑わうのなら金樽はそのまま海に抱かせておくがよい」こういわれたと。
 
 それからじゃぁいいますなぁ、阿蘇の海で獲れるイワシを他と区別して金樽鰮と呼ぶようになったのは。今でも、阿蘇の海のどこかに、殿さまの金造りの樽が沈んであるはずじゃ、いうております。

2022年2月8日RT(207)
編集部 春風

編集部 春風

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