チョウの軌跡・長谷川三郎のイリュージョン

京都国立近代美術館が、「感覚をひらく」事業の第3弾として、長谷川三郎の抽象絵画をテーマに「チョウの軌跡――長谷川三郎のイリュージョン」を開催すするというニュースです。

1937年、長谷川三郎は《蝶の軌跡》という抽象絵画を描きました。画面は8の字や楕円、点々や荒い筆致だけで構成されているため、どこにチョウの動いた軌跡が描かれているのか分かりません。ただ、画面のなかで何かが動いていた気配だけが漂ってきます。こうした抽象絵画から受ける目に見えない気配のような感覚は、どのように伝え合うことができるのでしょうか。

本プロジェクトでは、中村裕太(A)、安原理恵(B)、松山沙樹(C)の3人が、この作品と同じ大きさのキャンバスの上で、長谷川の筆致をなぞりながら言葉を交わし、図録や美術雑誌などの文献資料を読み合わせ、さらに動物行動学からチョウの飛ぶ道を検証していきました。そして、粘土やロープ、小豆などの素材を組み合わせることで、触れることで想像力が刺激される《蝶の軌跡》の触図*を作り出していきました。

〈キャンバスに《蝶の軌跡》の触図をつくる〉(撮影:表恒匡)

展覧会では、3人の会話や行動をもとに《蝶の軌跡》にまつわる長谷川の思索を推し量りながら制作した14種の触図を展示空間に設えます。会場を巡りながら、触図を見て、聴いて、触れることで抽象絵画の新たな鑑賞方法を探っていきます。

  • 作家紹介|中村裕太

1983年東京生まれ、京都在住。2011年京都精華大学博士後期課程修了。博士(芸術)。京都精華大学芸術学部准教授。〈民俗と建築にまつわる工芸〉という視点から陶磁器、タイルなどの学術研究と作品制作を行なう。近年の展示・プロジェクトに「第17回イスタンブール・ビエンナーレ」(バリン・ハン、2022年)、「眼で聴き、耳で視る|中村裕太が手さぐる河井寬次郎」(京都国立近代美術館、2022年)、「万物資生|中村裕太は、資生堂と  を調合する」(資生堂ギャラリー、2022年)、「ツボ_ノ_ナカ_ハ_ナンダロナ?」(京都国立近代美術館、2020年)、「in number, new world/四海の数」(芦屋市立美術博物館、2019年)。著書に『アウト・オブ・民藝』(共著、誠光社、2019年)。https://nakamurayuta.jp/

  • 関連イベント

ギャラリートーク

日時|10月14日(土)16時~17時
ABCのメンバーと本展のデザインチーム(D)が展示のみどころやプロジェクトの裏側を語り合います。
会場:京都国立近代美術館4Fコレクション・ギャラリー
※定員・詳細は決まり次第、本ウェブサイトで公開します

トークセッション

日時|11月5日(日)14時~17時
ゲスト|広瀬浩二郎(国立民族学博物館教授)
抽象絵画をどう「さわる」のか、会場で触図に触れながらその意義や可能性について話し合います。
会場|京都国立近代美術館4Fコレクション・ギャラリーならびに1F講堂
※定員・詳細は決まり次第、本ウェブサイトで公開します

  • 特設サイト「ABCコレクション・データベース Vol.3 長谷川三郎《蝶の軌跡》のイリュージョン」

長谷川三郎《蝶の軌跡》を言葉、文献資料、チョウの行動、触図からひも解いたウェブサイト。

※ウェブサイトは10月5日(木)公開予定です

https://www.momak.go.jp/senses/abc/hasegawa

  • 展覧会概要

展覧会名|エデュケーショナル・スタディズ04「チョウの軌跡――長谷川三郎のイリュージョン」

日時|2023年10月5日(木)~12月17日(日)

会場|京都国立近代美術館 4Fコレクション・ギャラリー内

観覧料|一般430円(220円)、 大学生130円(70円)
※( )内は20名以上の団体
※高校生以下・18歳未満・65歳以上は無料*。
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料*。
※母子・父子家庭の世帯員の方は無料*。
*入館の際に証明できるものをご提示ください
※本料金でコレクション展もご覧いただけます。

主催|京都国立近代美術館

特別協力|甲南学園長谷川三郎記念ギャラリー

助成|令和5年度文化庁Innovate Museum事業

制作協力|フライヤーデザイン・ウェブサイト制作: Studio Kentaro Nakamura

什器製作|タケダ工作所

2023年9月17日RT(141)
編集部 春風

編集部 春風

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