ばっちゃんを裏切りたくないけん!

 「ばっちゃんと約束したし、よくしてくれるけん。僕、ばっちゃんを裏切りたくないけん」。ばっちゃんこと中本忠子(ちかこ)さんの頬に一筋の涙がこぼれました◆「ばっちゃん~子どもたちの居場所 広島のマザーテレサ」(扶桑社)の一節にあります。福祉ネットワークで知られるNHKディレクター・伊集院要さんが、広島の保護司の忠子さんと非行に走った子どもらとのふれあいの姿をNHKスペシャル(2017年1月)で放映した時のことを本にしました◆保護司とは、「暴行」「万引き」など、法律に触れる行為をしてしまった子どもたちが家裁での審判で、更生できると判断された場合には「保護観察」となり決められた約束事を守りながら家庭などで生活します。その子どもらに関わっている人のことです◆ばっちゃんの自宅は、玄関を上がるとテーブルとイス2つがあるだけ。親からも見捨てられたりした子どもらに、「40数年間365日24時間毎日無償の手料理」を振る舞い続けてきました。万引きを繰り返す子、 親の暴力を受けた子、シンナーを吸う子ら帰る所がない子どもらの面倒を見ています。

 ~中学を出たばかりのヒロキ(仮名)は、テレビカメラに一瞬びっくり。ばっちゃん:「あのね。あのね。NHKの人。こんにちはって」。ヒロキ:「こんにちは!」。ばっちゃん:「ええ男じゃろ。見ちゃって」、ヒロキ:「恥ずかしい」◆カメラを回しながら伊集院さんは、その会話を聞いて、「取り繕わない、笑顔でごく当たり前のように我が子のように振る舞う」「素の姿だった」と。忠子さんは、保護司を引退しましたが、その後も全国から訪ねてくる子どもらに笑顔と手料理を振る舞っています。でも、全ての子が立ち直っているわけではないのです。それでもばっちゃんは、「決して見捨てず、諦めず」に関わりを続けています◆「ばっちゃんを裏切りたくねいけん」「大人になったらばっちゃんを旅行に連れていくけん」。終始笑顔のばっちゃんの目から涙が溢れ出ました。ばっちゃんの口からは、親や社会への激しい怒りの言葉は出てきません。「その子をみれば親の姿がだいたい想像つくね」とだけ。手作りの晩御飯を食べて満腹になったその子の頭を「かわいいじゃろ」と言いながらなでるのです◆「腹をすかせた顔をみよったらね、せんにゃおれんようになる」「来たときに腹をすかせた顔よ、帰る時には生き生きしちょるじゃろ」◆陰ひなたで、ばっちゃんのように、こうして子供らに向き合っている方が沢山おられます。「6人に1人の子供らが1日1食」(厚労省)という“子供貧困”の中で、ばっちゃんの言葉に素直にうなずくばかりです。

(西村 敏雄)

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2021年7月27日RT(888)
編集部 春風

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