ひとり住めばあをあをとして草

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ(小林一茶)

 彼が我儘気儘に寝転んだのはどこであったろう。居候していた家の別間か、道中の安宿か、それとも途上の樹蔭か、彼はそこでしみじみ人間の幸不幸運不運を考えたのであろう。切っても切れない、断とうとしても断てない執着の絆を思い、孤独地獄の苦悩を痛感したのであろう。

 所詮、人は人の中である。孤立は許されない。怨み罵りつつも人と人とは離れがたいのである。人は人を恋う。愛しても愛さなくても、家を持たずにはいられないのである。みだりに放浪とか孤独とかいうなかれ!

 私は一茶の句を読むと多少憂鬱になるが、同時にまた、いわば片隅の幸福を感じて、駄作一句を加えたくなった。――

ひとり住めばあをあをとして草

種田山頭火「片隅の幸福」から抜粋

2021年8月18日RT(345)
編集部 春風

編集部 春風

京都の暮らしが少しだけ楽しくなるニュースをすろ~な感じで配信しています。記事へのご意見・ご感想は、メール(info@slocalnews-kyoto.jp)で送ってください。心からお待ちしています。

人気のある記事ベスト15

まだデータがありません。