正直な人間でありなさい
「1日幸せでいたければ床屋に」「1週間だけなら結婚を」「1か月幸福でいたいなら新しい馬を買え」。イギリスの諺にある◆続きがあります。「1年幸せでいたいのなら新しい家を建てる」。「生涯幸せでいたければ『正直な人間』でありなさい」。この「幸せ」を語るにはこの画家に登場してもらわねばなりません。
ポスト印象派のポール・ゴーギャンです。南太平洋の島・タヒチに渡り、「タヒチの女性」「母性」などをその神秘的な色使いで描く画家として知られています。それ以前の彼は、商船の水先案内人や海軍軍人、株式仲買人などの職業を転々とした人生を送っていました◆35歳を超えてから好きな芸術の道へ進みました。タヒチへ渡ってからの生涯は、サマセット・モームの「月と六ペンス」で紹介されています。「月」はいわば「理想」。「六ペンス」は「現実」を表しているのです◆ですが、絵は売れず、精神的にも経済的にも破綻しました。ゴーギャンは単に写実的に、目に見えるものを描くだけではなく、それらを描きながら、「目には見えない希望や幸せなど心の内面を表現しようと一生懸命に試みたのです」(元読売新聞美術担当編集委員・芥川喜好氏)◆彼は、「六ペンス」を捨てて、希望の「月」を求めたました。貧困と病の中で世を逝った彼のいう最後の幸せとは、「正直な人間である」ことでした。他人に正直であることはもちろんですが、真の幸せにもつながる「自分自身に正直であること」を絵を通して言いたかったのですね。
政治の世界では、「首相の顔を窺いながら公文書の改ざんをする」。サラリーマン生活では「したくもないゴルフも上司がするのでお付き合いする」など、自分を偽り、“借り着”をはおって人生を歩むような人も少なくない◆それにしても、「結婚が1週間の幸せとは?」。いやいや諺でしたね。「悔いのない人生をおくる」には「正直に生きる」ということを心がけたいですね。
(西村敏雄)
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