軍服を着たチンパンジー
「すろーかる・かわら版2」
「必死で生き延びるウクライナの動物を救おう」。ゾウやライオン、キリンには、子どもだけでなく大人にとっても夢がある。でも時には悲劇も。戦火のウクライナの動物園の動物を安全地帯に移すため、日本動物園水族館協会や国際的な愛護団体などが、寄付金受付のサイト立ち上げる◆日本では、先の大戦で、空襲でゾウやトラ、ヒョウなどの猛獣が、動物園から逃げ出し人に被害を及ぼすとして、上野動物園を皮切りに全国で殺処分が行われた◆それまでは、戦意高揚の為、チンパンジーは、戦闘帽をかぶり軍服を着せられ、鉄砲を担ぎ笑いを誘った。ゾウは長い鼻で旭日旗を柵越えに振って見物人の人気の的だった。京都市動物園では池に軍艦を浮かべた。
戦争に協力させられていた動物たちを悲しい運命が待っていた。中には東南アジアから“戦利品”として持ち込まれた動物もいた◆永井荷風が日記に書いている。「上野動物園の猛獣は薬殺~帝都修羅の巷となるべきことを予期せしがためなり」。動物の多くは毒入り餌を食べた。が、3頭のゾウは敏感で食べない。飼育係の方が泣く泣く水と餌を絶つ餓死の処置を取った。最後のゾウが餓死したのは30日後だ。柵に向かって教えられた「万歳」の芸当をして餌をねだる姿で死んでいた◆市民から哀悼の寄せられた鎮魂の一句。「来る世は 人に生まれよ 秋の風」。80年近い年月が経つ。いままた戦争が身近になり、“君ら”に、「人にうまれよ」と言えないのが辛い。
(大峯ビンユー)
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