~女の子の難病 レット症候群に薬を~

 紹介するのは、読売テレビが2020年9月に放映した枚方市に住む谷岡哲次さんと娘の紗帆(さほ)さん親子。紗帆さんは神経性の難治性疾患「レット症候群」(①別資料)を患っています。番組は、紗帆さんが原因不明の難病だと知った父・哲次さんの奮闘を3年にわたり追い続けたドキュメンタリー。京都市内の大学の看護学部の講義でも取り上げられました。女子学生が「子育てが難しい世の中になり、紗帆さんを支える家族の力、優しさ、そして紗帆さんの笑顔にも胸を打たれました」と。この番組を見た視聴者からも「我子も四肢に神経性の~沢山の勇気、生きる力を頂きました」との反響が。番組を手がけた読売テレビプロデューサー・堀川雅子さんに「この番組で何を視聴者に訴え」「ドキュメンタリーの使命や役割とは」などをお聞きしました。(西村敏雄)
番組詳細:https://www.ntv.co.jp/document/

Q:レット症候群という難病を取り上げたきっかけや背景から

―16年前に、本当に偶然のことなのですが、レット症候群の女の子との出会いがありました。偶然というのは、神戸の小学生連続殺傷事件のご遺族が、名古屋の事故障碍者の方に会うという取材の時に、たまたまその病院にレット症候群の女の子がいたのです。「女の子にしか発症しない病気がありますがご存じですか?」と言われ、まったく知らなかったので、当日急遽カメラを回させていただき、短いニュースで放送しました。その後、気になりながらも報道する機会はありませんでした。3年前、同僚からレット症候群の国際シンポジウムが神戸で開催されることを教えてもらい、「あ!あの時の女の子の病気だ、取材しなければ」という直感めいたものがあり、シンポジウムへ。そして今回の番組の主人公となる谷岡さん親子に出会い、治療薬がない現状を知り、ドキュメンタリー番組にできないかと考えました。

Q:紗帆さんの姿を拝見してご親子の“絆”を

―お父さんの奮闘に毎回心を打たれるだけでなく、とにかく、紗帆さんの笑顔があまりにも素敵で、とても魅力を感じています。一番は目、ですね。たとえ言葉を話せなくても十分に意志を伝えてくれています。今年の春、お父さんと紗帆さんが満開の桜の下を散歩する姿を撮影させていただいたのですが、お父さんと一緒にいるときの表情がとてもうれしそうで、親子の絆を感じました。また、厚生労働省で、お父さんが薬の開発や承認をもとめる陳情されたときの、紗帆さんの強いまなざしも印象的でした。

Q:我が子だけでなく、この難病を救おうといている哲次さんの志もすごいですね

―お父さんとしては、現実問題として、薬や治療が自分の子供には間に合わないかもしれないと、感じておられます。でも、たとえそうだとしても、薬や治療により救われる子供さんやご家族がいるならば、それこそが「紗帆さんが生きた証・意味なのだ」と強く思っています。わが子の存在を心から幸せに思い、感謝されているからこその言葉で、深く共鳴しました。谷岡さん夫妻が、最初に、自分の子供の成長に異変を感じ、なかなか診断がつかず、最終的に九州の久留米大学で「レット症候群です。薬はなく、完治もしません」と告げられた時のことを想像するとつらくて胸が苦しくなります。診断の帰りの新幹線で、「薬がないならつくってもらうように自分が動けばいいのだ」と決心されるあたりは、行動力のすごさもさることながら、やはりわが子を思う親の気持ちの強さを感じます。翌日にはNPOを立ち上げることを決めて、奥さんは大変驚かれたそうです。でも、そんな旦那さんの意思を尊重し、日常生活や紗帆さんの介護を主婦としてしっかり支えておられる奥様も、素晴らしいと思います。

Q:「さほは、さほのままで、いいんだよ」と日記に書いたご主人の言葉に奥様も・・

―取材を続けて3年半で、初めて、日記を読ませていただきました。思い切って奥様の心情に迫りました。長く取材をしても、信頼関係というのは簡単に築けませんし、難病のお子さまを持つお母さんの気持ちは、分かろうとしても同じにはなれないものだと思います。それゆえ、なかなか切り出せなかった取材なのですが、当時の思いを表すものとして、日記(現実には手帳)を出してもらったとき、一番心に残った言葉が「さほは、さほのままでいい」というご主人の言葉でした。難病の娘をもつ父、母、それぞれの立場でお互いを支えあう姿に感動しました。と、同時に、私には想像を超える苦労や悲しみを経たからこそ出た、言葉なのだろうとも。私自身は現在9歳の男児の親なのですが、親になって、取材の時の感じ方や番組のまとめ方は、大きく変わったと感じています。

Q:それにしても紗帆さんの笑顔は素敵ですね。そして「パパと呼んで」と

―紗帆さんの笑顔には不思議な力があります。心の底から笑っている、そしてお父さんが大好きなんだな…とわかります。満面の笑みです。紗帆さんの髪留めには「ニコちゃんマーク」のものが多いのも、納得です。ニコちゃんマークは、紗帆ちゃんのアイコンです。レット症候群の症状は人によって本当に様々です。立つことのできる子もいれば、立てない子もいますし、発声できる子もいればそうでない子も。紗帆さんが生まれてから一度も聞いたことのない言葉「パパ」というのは、私には想像さえできないほどの「言葉」の重みなのだなと思います。谷岡さんに紗帆さんが「パパ」と呼ぶ日は、私の切なる願いでもあります。

Q:堀川さんの手がけるドキュメンタリーは、失礼ですが受け狙いの「お涙頂戴」ではないものを

―ドキュメンタリーは色々な伝え方があると思います。私は、人が行動を変えるのは「共感すること、だと思っているので、人の心にしみわたる何か、を映像で伝えられたらなと思っています。それが一番難しいのですが。そのためには、信頼関係というのが一番大切で、取材者の不注意・不用意な発言、態度などで、一瞬に崩れるものでもあります。そのようなことがないように、相手の立場に立って、ということは常に意識しています。また、伝え方としても、悲しい場面や感情的なことばかりを、協調するのではなく、客観的な情報や国や法制度の在り方の不備なども掘り下げ、多角的に伝えられるよう意識しています。「共感」だけでなく「同じように怒ったり泣いたりする」ということが、次の何か、誰かの一歩、につながると思って取材や制作を続けています。

Q:他の難病で苦しみながら頑張っている方々も勇気を頂いたのでは

―取材の原点は、伝えることでお父さんや紗帆さんの状況が少しでも改善し今後の治療薬、日本に20歳未満は1000人いるといわれている難病に光があたってほしいということにつきます。立場は取材者であり、当事者ではありませんが谷岡さん親子やほかの患者さんたちの姿を通じて、未来にむかって、よりよい医療の在り方を模索し続けたいと考えています。きっと光は見えると信じています。

Q:堀川さんにとってドキュメンタリーとは何か

―時代の記録であり人を幸せにするための一つのカタチだと信じています。事件や事故、災害、そして病気…人は時として理不尽な出来事に直面することがあります。ニュースとは違って、ドキュメンタリーは、「事故の悲しみ」といった負の側面だけでなく「絶望の後いかに生きるのか」という、人としての根源的かつ普遍的なテーマも描くことができると思っています。ドキュメンタリーは長距離ランナー。放送するたびに、自分の無力さ無能さが嫌になりますが、それでも制作し続けてきたのは社会の片隅にある声なき声を届けたいから。きれいごとだと言われても、テレビは人を幸せにするものであると信じています。

西村:ありがとうございました。

【ストーリー】

大阪府枚方市の谷岡哲次さん(43)。12年前に生まれた娘・紗帆(さほ)さんが神経性の難治性疾患「レット症候群」だと知ったのは10年前。女の子に発症し、言語・運動能力に遅れがみられ、現在、治療薬はありません。日本の患者は推定1000人。谷岡さんは「薬がないなら薬を作ってもらう」と、NPОを立ち上げ、研究者に助成金を寄付する活動を続けています。

①レット症候群(レットしょうこうぐん)の障害は、ほとんど女児に起こる進行性の神経疾患であり、知能や言語・運動能力が遅れ、小さな手足や、常に手をもむような動作や、手をたたいたり、手を口に入れたりなどの動作を繰り返すことが特徴。1966年ウィーンの小児神経科の医師であるアンドレアス・レットにより最初の症例が発表された神経疾患で、日本では小児慢性特定疾患に指定されている。https://www.npo-rett.jp/

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2021年2月9日RT(144)
編集部 春風

編集部 春風

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