紗帆さんの父親・谷岡哲次さんへのインタビュー

 神経性の難治性疾患「レット症候群」を患っている紗帆さんの父親・谷岡哲次さんに、「レット症候群(https://www.npo-rett.jp/)を広く知ってもらい、予防や治療法を確立するために認定NPO法人「レット症候群支援機構」を立ち上げてきたいきさつやその成果、そして中等部に入学した紗帆さんの日常生活などについてインタビュー致しました。2020年9月に読売テレビに放映した「パパって呼んで」のプロデューサー・堀川雅子さんへのインタビュー記事に次ぐ第2弾です。堀川さんには、ご多忙の中にも拘わらず、谷岡さんへのインタビューの仲介の労をとっていただき実現しました。
(西村 敏雄)
★すろ〜かるニュース京都「パパって呼んで」(2021年2月9日)

認定NPO法人レット症候群支援機構立ち上げでの谷岡さんのご挨拶から

 「2008年のある寒い冬の日に、私達家族のもとへ元気一杯に泣きながら冬の寒さが一瞬で吹き飛ぶほどの暖かい女の子の命が産まれました。この時私は、父親としてこの子を何があっても守ってあげようと心に誓いました」「その後順調に成長していたかのように見えた娘は、とても重い障がいレット症候群だと解りました。今まで出来ていた事が出来なくなっていく姿をただ見守る事しか出来ず、出来る事なら代わってあげたいと、極端な話しですが、自分の命と引き換えに娘が普通の女の子になれるなら…『神様そうして下さい』とも考えました」

 「おそらく産まれてからと、この障がいが解った後のこの気持ちは、同じ障がいを持つ子のお父様、お母様なら私と同じ思いを持った方もたくさんおられると思います。私も皆様と何も変わらない普通のお父さんです」「だからこそ!だと思いました。この子たちの為にそこまで本気で考え何か出来るとしたら、それはお医者さんではなく、政治家さんでもなく、製薬会社さん でもなく、私たちの様な普通のお父さん、お母さん以外に考えられないと思います」「この子達の代わりになってあげる事が出来ないなら、それに変わる行動をする時が今だと思います。まず、私達が汗を流し声を上げて、一生懸命に 伝える。それがやがて、色々な人達や、色々な物事を動かす力になると私は信じています。今日も世界中で5時間に1人のレット症候群の女の子が産まれています。この障がいが解ってから約45年…もうそろそろいいでしょう?私達の世代でこの闘いに終止符を打ちましょう!」

代表理事・谷岡 哲次
     

西村:谷岡さんこのたびはご多忙の中でのインタビューをお引き受け下さいましてありがとうございました。

―紗帆さんのレット症候群について教えて下さい
 レット症候群の症状は個人差がけっこうあるらしいのですが、娘のレット症候群の症状はどちらかというと重度な方になります。1歳ごろまで出来ていたお座りや、ズリ這いを運動能力のピークとして、徐々にそれらは出来なくなってしまいました。それと同時にレット症候群の特徴でもある手の異常な常同行動が出てきました。うちの子は手を口に常に持って行ってしまい、口の周りが傷だらけになって痛々しかったです。それからてんかん、側彎症、足首の内反、息止めなど様々な障がいを併発してしまっています。紗帆は今13歳になりましたが、一人でお座りの姿勢を保つ事も難しく、言葉も一度も発した事がありません。そんな状態ですが表情は豊かで自分の感情は目で訴えてきます!

―紗帆さんがそのレット症候群と聞かされた時は
 紗帆の症状から調べてネットでレット症候群を知った時は血の気が引くというか、目まいがして気分が悪くなり吐き気さえもしました。「進行性の不治の難病-レット症候群」この衝撃的な信じ難い難病が紗帆と酷似している。妻もレット症候群を知った時は、相当ショックを受けていました。当時はケアの方向性の違いで喧嘩する事も多かったようにも思いますし、夫婦共に毎日必死に少しでも紗帆の体に起こる変化と闘っていました。それから、私達親はレット症候群を疑いつつも、1年くらい大阪のある大学病院で色々検査をしましたが、レット症候群の診断はまだ早いと言われ、診断がつかない事に、もしかしたらもっと違う難病なのか?とかそれなら治るかも?とか気持ちの置き所がはっきりしない悶々とした時間がありました。

―九州の病院へも足を
 最終的には、レット症候群の研究もされている九州の小児科の先生に直接連絡をさせて頂き、娘の症状を伝え診察をお願いしました。そこで初めてその先生に「レット症候群でしょうね。」と言われ、自分達が疑っていた難病で間違いがなかったと、複雑な思いではありましたがどこかスッキリした気持ちでした。そこでどうしてもその先生に聞きたかった質問をしました。「先生、本当に不治の難病なのでしょうか?漢方や針治療とかで治ったという例とかはないですか?」と素人質問をしました。その時、先生は明確に「世界中でそのような報告は聞いた事がない。もしそのような事実があれば何らかの形で発表される」とはっきりと言われました。その後その先生は日本の患者団体の話、海外の患者団体の話をして下さいました。

―本当に藁おもつかむお気持だったのですね
 その帰り新幹線の中で自分自身を反省していました、この日まで実はどこかで奇跡のような治療があるのでは?奇跡のような神の技を持つような人が治してくれるのでは?とか甘い期待をどこかで思っていました。でも、それはない。そのような事は世界中探してもない・・・・新幹線の中、紗帆は疲れてスヤスヤ気持ちよさそうに寝ていました。誰かに期待だけするのはやめよう。そう思いました。その代わり、自分自身が紗帆を苦しめるレット症候群治療薬開発に何か役に立てないだろうか?浅はかな思いは大阪に着く頃には治療薬開発を目指すNPO設立に向けて決断していました。

―紗帆さんの父親としての決断の結果がNPO設立に繋がったのですね
 NPOを立ち上げて10年が経過しました。勢いで設立を思い立ったものの、設立の人員も活動を広げる人脈も資金もなく、まさしくゼロからのスタートでした。また研究支援をする患者団体はあまり例がなく、何から始めていいか手探りでしたが、紆余曲折ありながらもとにかく色々な方法でレット症候群をアピールしていると、運のいい事に沢山の研究者の方々にも巡り合い、多くの支援者の方々にも恵まれ、メディアにも恵まれ、設立当初から毎年研究成果等を発表するシンポジウムを開催したり、7年目には国際的なシンポジウムを開催する事も出来ました。また、色々な研究者さんとの共同プロジェクトも立ち上げて、一緒にレット症候群完治を目指すチームが日本でも出来つつあると思っています。

―募金などその後のその成果は?
 設立5年目より本格的な研究支援として研究公募を行っていまして、毎年2組の研究者に支援を行ってきました。累計で1200万円程度の研究支援を行う事が皆様のお陰で出来ております。その中から論文で発表されるような研究や、来年を目標にレット症候群の一部の症状の緩和を目指した治験の計画も出て来たり、遺伝子治療を目指す事での自治医科大学との協定を締結したり・・・皆様からの温かい募金は小さな小さな種かも知れませんが確実に色々な所に撒かれています。

―国の支援や医師、薬剤メーカーとの連携は
 研究費だけを見ると欧米等の先進国と比べるとかなり低いようですが、保険制度や福祉の面から考えるといい方なのかと思っています。医師、研究者さんとは連携出来ている方だと思います。私達が出来る事は世間に情報を発信する事と、研究協力として開発費用の支援であったり、疾患児の情報提供等多くはないですが、一緒にチャレンジするという風潮が出来つつあると思っています。薬剤メーカーとは具体的な私の知る限り連携はありません。そのあたりはコンプライアンスの問題があり複雑な事情もあるかと思いますが、シンポジウム等では大手の薬剤メーカーさんも何社か毎年出席してくれいています。

―同じ疾患をお持ちの方々の親御さんらとの連携などは
 会員という形で支えてくれている方々や、研究調査や、広報活動等々手伝ってくれています。今やSNSで世界中のレット症候群の関係者とコミュニケーションがとれる時代なので、とりあえずは患者さんも研究者さんも含めて日本中のレット症候群関係者を一つにまとめたいですね。

―紗帆さんの表情、笑顔が素敵ですね。中等部ですが毎日どのようにお過ごしですか
 そうですね、この笑顔にどれだけ日々救われているか。嫌な事があっても一瞬で忘れさせてくれます。平日は毎日近くの支援学校の中等部に行って勉強?もがんばっているようです。15時頃からはデイサービスに通いそこでは色々な遊びをしたりして楽しんでいます。あとは定期的にリハビリも頑張っています。日常の介護があるのでどうしても制約されるところはありますが、休みの日は出来る限り食事を楽しんだり、出かけたり、最近は行けてないですが旅行も色々行きましたね。紗帆は水族館が好きな気がします。あくまでも表情からの想像ですが・・・。

―「アンパンマン」がお好きですか?
大好きです。

―NPOの代表としての今後の取り組み(募金など)は?
 今後の取り組みは目指せレット症候群オールジャパン。今まで通りの活動プラス新たに日本のレット症候群患者の住所登録システムの構築を考えています。全国の患者さんを一つにまとめて、国内の100名以上おられる研究者さんと連携出来る仕組みを模索中です。

西村:大変お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。谷岡さんが帰りの新幹線の中で、「奇跡のような治療が~奇跡の神の技をもつ人が~」という親なら誰でもが思う望みに決別し、「自分自身が紗帆を苦しめるレット症候群治療薬開発に何か役に立てるのでは」とのご自身の決意に強く心を打たれました。レット症候群以外の多くの難病を抱えている患者さんや親御さんらにも勇気を与えてくれた気がします。

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2021年3月11日RT(424)
編集部 春風

編集部 春風

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