希望は雲の上に

 「雲の上には光り輝く星(希望・真実など)があるんだよ」。孫娘と一緒に観たアニメ映画「えんとつ町のプペル」で主人公・ルビッチの漁師・父親が語った言葉です◆町のいたる所にある煙突から立ち上る黒煙で空は覆われ、高い外壁で囲われている。植物も育たないコンクリートや金属などで作られた周囲4千㍍の「人工都市」の物語でした◆内容を少々~町には3つのルールがある。「空を見上げてはいけない」「夢を信じてはいけない」「真実を知ってはいけない」。町の外壁や空の黒煙の雲は、為政者がその向こうの世界を市民に知らせないために考えた“仕掛け”です◆そこに登場するのが、廃品で作られた「ゴミ人間」。ハロウィンの日に突如現れます。市民らに臭いと疎んじられましたが、ルビッチは友達に~父の「星」を信じ一緒に為政者らの謀略を暴き、真っ黒な雲を吹き飛ばし~希望、夢、生きがい、真実の星を取り戻す~というストーリー。映画は、吉本のお笑いコンビ「キングゴング」の西野亮廣さんが書いた絵本(写真)が題材。原作・脚本・製作総指揮4年半をかけて制作されました◆お笑い芸人が、なぜ絵本作家に?「タモリさんからのアドバイス」だったそうです。独学で絵を学びました。タモリさんは売れない時期に、「笑いのネタ仕入れ」のために喧噪と混乱、歓喜が雑居する東京・歌舞伎町に足を運んでいたそうです。世相を見る目を養っていたのですね◆「えんとつ町」で描かれたストーリーはまさに現代社会を浮き彫りに。「キン・コン」での西野さんは、周囲から「高圧的など」とも言われましたが、観客の鬱積を代弁するような“突っ込み”や“視線”に、タモリさんは彼の才覚(マルチタレント性)を見ていたのかも◆今年になり突然、西野さんは契約していた吉本興業から契約解除されました。一昨年、京都・伏見区で起きた「京アニ放火事件」で亡くなった若きアニメーターたちの中にも、希望や夢の途中だった方も。西野さんを目標にしていた人もいました。「たかがアニメ、されどアニメ」。心が沈む日には、町を抜け出し自然の中で「空を見上げよう」。子どもの頃に描いた夢や希望に出会えるかもしれない。

(西村 敏雄)

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2021年2月18日RT(261)
編集部 春風

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