龍馬のきぶみ

京都のJR二条駅近くに「365日晴れの街」がある。約800メートルのアーケードが続く『三条会商店街』だ。

ドームの屋根があるから雨の日でも一歩商店街に入ると傘はいらない。だけど、晴れてはいないから、「365日雨が降らない街」の方がしっくりくるけど。

そんなことを思いながらとぼとぼ傘を引きずり歩いていると、突然、空中から坂本龍馬が現れた。

『武信稲荷神社』
―ぶしん?(本当は「たけのぶ」だけど)龍馬の横にある矢印が、「行くよね。ここまで来たのだから行くよね」って。

特に行くあてがあるわけじゃないし。ただちょっと、傘を開くのが面倒だけど、でも、ただ、それだけだから。

曇天に掌を突き上げたら届く華奢な鳥居。細く降り注ぐ小さな雨粒。幾重にも並ぶ古びた木製のアーチ。洗いたての朱色がグラデーションのように続いてる。

「榎(えのき)はね、縁の木だから」
―御神木。樹齢約350年。高いてっぺんの葉を見上げて、濡れた土を見下ろした。樹木の根が力ずくで参道の重い石畳を押し上げてる。

永遠過ぎだから…

「龍馬がね、刻んだの」
―御神木。いまは無いけど木肌の「龍」の字が、愛するおりょうさんを勇気づけた。京都で生きている証だから。

命を追われてるから。
迷惑をかけたくないから。
いま、会いに行きたいけど…

「榎はね、縁の木だから」

「龍馬がね、そっと、刻んだの」

―春風―

★「武信稲荷神社」https://takenobuinari.jp/

2021年3月14日RT(115)
編集部 春風

編集部 春風

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