「幸せ」とは気付くものだと。

【紗帆ちゃん日記最終回】

 レット症候群という難病を知ってもらうきっけかになればとこの場をご提供して頂き、気が付けば半年、今回を含めて計7回。いつものようにとある一日ご紹介させて頂き、感謝の気持ちを込めて今回で最終回とさせて頂きます。これまで何気ない紗帆の日常にお付き合い頂き有難う御座います。

 「紗帆ちゃ~ん、ゆ~らゆら~」「ブゥ~ン」と言いながらちょっとだけアクロバッテイックに揺らしながら、朝ごはんを食べたばかりの紗帆を抱きかかえて、車まで移動すると「フッ・・・フフフ」楽しそうな笑顔で答えてくれる。この日は月に2回通っているリハビリの日。車で高速を使っても一時間は掛かる距離だけど、窓から流れる景色をみる紗帆の目はキラキラしている。アンパンマンの音楽を聴きながら、どこかに遊びに行けると思っているのかミラー越しに終始ニコニコの紗帆。しかし・・・残念ながら到着したのはリハビリセンター。心の整理も付かぬ間にマットの上で寝転んで、リハビリのベテランの先生に足を伸ばしたり、曲げたりされている。「何?何~?」と、ちょっと戸惑いを隠せない表情で、されるがまま身を任せている。足首に筋緊張があり強く内反していたり、膝が伸びない状態や背骨が湾曲していたり・・・。

 気が付けばレット症候群を発症して約10年。見た目にも辛そうな紗帆の体のあちこち。先生も13歳にしては小さな紗帆の体を一生懸命にほぐしては整えてくれている。リハビリは時間をかけて、少しずつ不具合の部分が改善されるのが理想。紗帆にとってはその理想は現段階では相当厳しいが、せめて現状維持には留めておきたいのが親の願い。先生「紗帆ちゃん、ココが固くて縮んでいるから伸ばすね~」「ちょっと痛いかもやけど頑張れ~」
紗帆「・・・・」無言でじっとこちらを見つめて・・・からの~「ニタッ」ってどや顔。
「痛いけど泣いてないよ~」「頑張ってるでしょ~」のアピール!?
思わずこちらもつられて笑顔にされてしまう。その場にいた先生もママも気が付けば皆が笑顔になっている。

 何気ない紗帆の日常の何気ない紗帆の笑顔が私達に教えてくれている。
「幸せ」とは気付くものだと。

(谷岡哲次)

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「パパ、ママありがとう」と語ってくれる日が近いことを

 昨年放映された読売テレビの「パパって呼んで~女の子の難病レット症候群に薬を」を幾度も観ました。その度に、紗帆ちゃんの笑顔や谷岡様の紗帆ちゃんを見つめる優しいまなざしにこちらが沢山、勇気を頂きました。一方でレット症候群の治療や国の支援などがどこまで進んでいるのか、頭の中をぐるぐる回りました。この「紗帆ちゃん日記」も7回目を。辛い表情の紗帆ちゃんに呼びかける谷岡さんのユーモア溢れる言葉に笑みがこぼれる・・。こちらもほっこりと。最終回を迎えましたが、紗帆ちゃんとの“心の対話”に胸が熱くなりました。読者からも「介護士をしていますが、1万人にひとりが発症するレット症候群という難病を初めて知りました」「結婚しますが、将来お産することを控えて貴重なお話を」との声も。このご縁はレット症候群が解決するまで続けさせていただこうかと思っております。これまでの「紗帆ちゃん日記」をお読みになって頂き、何かの折にでも、日本ばかりでなく、世界中にいるレット症候群の子供やご家族のことを思い起こしていただければと思っております。最終回にご無理申しましてインタビューをさせて頂きました。

(西村 敏雄)

西村:谷岡さんがレット症候群救済のNPOを立ちあげて約10年経ちます。その後の活動とその成果は如何ですか?
⇒10年という月日の間に築き上げた成果として確実に言えるのは人と人の繋がり。患者と研究者等の繋がりが国内外を問わず出来た事が一番大きいですかね。今後はこの10年で築きあげた繋がりを活かしてさらに研究促進に寄与したいです。今まさに当事者である患者家族が集結する為のコミュケーションアプリも開発していまして、近い将来患者家族と日本の研究者が一つにまとまるオールジャパンチームを目指しています。

西村:2025年をめどに、谷岡さんご自身、悩みながらも「遺伝子治療」によるレット症候群の研究支援を決断されましたが、その後の進捗状況は?
⇒遺伝子治療に向けた研究にはまだまだ課題も多く、今はまだ基礎レベルの研究が進んでいる状況です。結果はどうなるのかわかりませんが、未知の領域に時間を掛けてチャレンジしてくれるという事自体が私達にとっては大きな一歩です。

西村:レット症候群の支援機構への支援金など支援協力は増えているのでしょうか?
⇒支援協力は設立当初に比べるとお陰様で増えてはきています。ただ、単発ではなく継続的なご協力が必要となりますので、私達自身がもっとアピールの手段であったり、支援して頂ける為のアイテムやツール等を検討する必要があると考えています。

西村:米国で開発中の症状の一部緩和を期待した治療薬などの使用については、「書類問題等の不備」と指摘されたまま中々承認されていないのですね?
⇒国の支援としましては、患者に直接的に何かというのは個別には厳しいのは理解しているところです。それでも「指定難病」に認定されていたり、レット症候群の治療を目指した研究で研究者の方々が助成金を申請して受理されている研究もありますので、広い意味で支援はされている事になるのでしょうかね。海外の治療薬はまだまだ時間は掛かりそうですが、日本の企業が国内での販売に前向きなら状況は変わるかも知れません。ただ、今は世界中がコロナ禍でそれどころではないかも知れませんね。

西村:レット症候群の患者さんやご家族の皆様にとりましていま、大人になっていく我が子らへの治療薬以外に大きな課題となっていることは?
⇒やはり日々の療育ですね。年齢と共に側弯症なども進行する場合があり、いかにして現状の機能を回復若しくは維持させるかは大きな課題です。その意味ではコミュニケーションアプリがその情報交換のツールの一つになってくれればと思います。

西村:半年間という短い期間でしたが、コロナ禍など大変な時に、またお仕事も多忙の中、「紗帆ちゃん日記」を執筆して頂き感謝いたしております。一刻も早く治療の開発が進み、「パパ、ママありがとう」と語ってくれる日が近いことを願っております。ありがとうございました。

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2021年8月17日RT(711)
編集部 春風

編集部 春風

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