ニューギニアに降った雪
70数年前、太平洋南部にあるニューギニアにいた日本兵の頭の上に雪が舞った。まさかの雪に歓声があがり、そして深い悲しみに◆前進座の加藤徳之助さんが32歳の時に召集されその冬、敗戦濃厚な“生き地獄”とも言われたニューギニアに送られた。当時のニューギニア戦線の記録を読むと「ネズミやトカゲなど食べられるものは何でも口にし、マラリアやデング熱を病んだ兵隊の姿は骨と皮だけに」◆そこで、司令部は加藤伍長に兵隊を鼓舞しようと「演芸分隊」の編成を命じた。そこら辺の資材を使い小屋を建て、俄仕立てで舞台を造った。長谷川伸の小説「関の弥太っぺ」を舞台化し上演した◆加藤伍長は、なんと原作にない雪を降らせたんです。パラシュートを積雪にみたて切り刻んだ紙の雪を。加藤さんの「季節外れの紙吹雪」には生きて故郷に帰ってほしいとの願いがあった。ある日、「雪が降る」場面ではいつもは歓声が湧くが、この日はシーンとしている。ふと舞台の下をみると300人近い兵隊が全員、両手で顔を覆い泣いていた。東北出身の兵隊たちだったのです。
加藤伍長とは戦後、歌舞伎役者を経て「7人の侍」などの映画俳優となった加東大介さんです◆いま世界中を襲っている異常気象でニューギニアなど南太平洋の国々でも、“紙吹雪”でなく大粒の雹が突然降ってくる。気温が50度を超す欧米では山火事が頻発。そしてコロナ禍だ。日本でも季節外れの豪雨や気温上昇が全国各地で災害を引き起こしている。コロナ禍や季節外れの異常気象、そして戦争、人間が犯した愚挙から。酷すぎる・・
(西村敏雄)
◆記事に対するコメントはメールでお願いします。
info@slocalnews-kyoto.jp