絶滅危機にあるササユリの復活を

ササユリに夢を託す男たちの思い

 平成30年1月に南丹市・佐々江地区に住む6人の男たちが、今は絶滅危機にある「ササユリ」の復活を目指して立ち上がりました。「佐々江ささゆりクラブ」。全くの素人らが、それぞれの知恵を出し合って、ひたすら、あの甘い芳香を放ち白に淡いピンクのササユリに魅せられて、全員で走ったのです。その記録でもあります。

 3年後の今年6月、クラブのメンバーの家庭の鉢にもササユリが開花した。「やっと咲いてくれたんです~」。クラブ代表の中田裕さん(☎090・3707・6271)の心に熱いものが・・。少子高齢化の波はこの地にも。ササユリを通して地域活性化も目指すメンバーら。そして「ササユリを通して自然を愛でる心を」「ササユリでひと昔前の里山を思い出してほしい」。ゆくゆくは、「ササユリをヨーロッパに輸出してベンツ乗ろう(笑い」(中田さん)~楽しいですね。中田さん(写真左)とクラブ提案者の久世和義さん(右下)、吉田弘二さん(左下)、佐々江茂男さん(右)、山形敏信さんらクラブの方々に、その“熱き思い”を語ってもらいました(西村敏雄)

Q:今、鹿やイノシシなどにササユリを食べられて絶滅の危機とか?その状態は?

中田:60代以上の年代の方達の子どもの頃には、この地区の至る所にササユリが咲いていた(写真)そうです。
山形:その花を花束にして町へ売りに行ったり小学校へ持って行ったりしたと聞いています。それ程あったササユリも現在では、鹿に地上部を猪に球根を食べられ野生では殆どみられなくなっています。辛うじて獣害の及ばない個人の裏山や、獣でも立ち入れないような急斜面にのみ残っています。
久世:またもう一つササユリが減ってしまった原因としては、戦後に植林された杉檜が大きく育って、かつてササユリが咲いていた場所の日当たりが極度に悪くなった事も要因と考えられます。山野草苑を造成中に杉林の杉を間引くと地中に休眠していたササユリの種が発芽してきたのも日当たりが良くなったせいだと思います。

Q:そこで、南丹と京北の境界にある「あたご山野草苑」を開いたオーナーの一人である久世さん(090・8125・7750)の提案でクラブが設立されたのですね。

久世:子どもの頃に見ていた人たちにはその頃のササユリの思い出を懐かしんでもらい、初めて見る人たちには甘い香りの清楚な花色を見てもらいたいと、ササユリを中心とした山野草苑を開きました。苑内にササユリを植える権利を買っていただく「ササユリのオーナー制」にし、毎年佐々江に来ていただいて佐々江のファンを増やし、地域を活性化し、この地域の葉形・花色をもったササユリの中でも、特に美しい個体を増やして佐々江をササユリでいっぱいの里にしたいと願っています

Q:京北・細野の我が家の畑にも「咲いているよ」と孫らが言いますが・・

中田:それは、「タカサゴユリ」という白い花びらのゆりでよく間違えられます。よく高速道路ののり面や民家の家近くに咲きます。「タカサゴユリ」とは、台湾原産のユリで、戦前に庭植えや切り花用として日本に持ち込まれました。
 ですが、ササユリは本州の中部地方以西から四国・九州に自生する淡いピンク色のユリが「ササユリ(笹百合)」です。花期は5~7月ごろに咲きます。花がやや小ぶり、葉に白い覆輪が入る、花の色が濃いなど、自生地域によりさまざまな変種があります。地域によっては、「ササユリ」を「ヤマユリ」と呼ぶことがあります。芳香も色も違いますよ(笑い)。

Q:そのササユリの人工栽培は難しいのでは?最新のバイオの技術も活用も・・

吉田:バイオに縁もゆかりも無い高齢者ばかりでスタートしたクラブがここまでこれたのは元京都府立桂高校植物クリエイト科教諭の永井昌夫先生のご指導なくては考えられません。最初メンバー数人で美山町のご自宅までお願いに伺ったときは少し後ろ向きのご様子でしたが、「本気でやるなら!お手伝いします」とのお返事を頂き嬉しかったですよ。
中田:現在、私の家の2部屋を利用して培養室(写真左)を設けています。非常にナイーブなユリですから、直接、太陽光を避け、LEDの光を利用、温度、湿度もエアコンで。クリーンベンチ(無菌作業台)での細かく繊細な作業は、地元の山形めぐみさんや美山に住む清水淳子さんが手伝ってくれています。その指導や栽培培地養分作りにもご指導をいただいております。

Q:その栽培での苦労は?

久世:普通種子から開花まで8年かかるのを3年くらいに大幅に短縮するのに成功しました。ささゆりの優良・有望種子採取も手がかかります。ササユリは地域差や個体差が大きく、葉の形花の色には多くの変異が現れます。日本海側の葉形は丸みが強く太平洋側の花色は赤味が強く葉形は比較的細いようですが、内陸部の佐々江辺りでは、葉形はやや丸く花色は淡いピンクが多いようです。また、同じ地区内でも赤味が強いのから真っ白まで変化にとんでいます。

Q:将来は?

中田:自然界では開花に7年~8年かかるところをバイオ技術によって2年~3年で咲かせて地区内に植付け管理保護し、ササユリや他の山野草をふやしてあたご山野草苑と佐々江のファンを増やしていこうと計画を進めています
吉田:ゆくゆくはバイオ技術である程度まで育てた球根を、土中に植付け更に大きくする〔順化作業〕を地区の人達に委託して出来上がった球根を買い上げて販売する「若い世代でバイオ作業➡年配者による順化作業➡「ささゆりクラブによる販売」といったサイクルを確立して産業化につなげ、少子高齢化が進む佐々江地区の活性化に、少しでも寄与できればと考えています。

Q:「あたご山野草苑」の将来の夢を。数々の催しもしていますね

久世:山野草苑では毎年6月に「ささゆり開花祭」を開き、ささゆりファンや山野草ファンの大勢の人たちでにぎわいます。「あたご山野草苑」では、この地域にゆかりの深いササユリを中心とした日本庭園風野草園にしていこうと思っているんです。ささゆりクラブは「ササユリ球根の供給者」として。またあたご山野草苑は「ササユリ種の供給者」として協力し合い、また他の山野草の生産者としても関わっています。
佐々江:いまは南丹市の中でも美山地域に集中している観光客を何とか日吉町佐々江へ呼び込みたいと思っています。また、地元の農産物を使った名物も考案中です

Q:昨年11月からは増産や地域起こしのためにクラウドファンディングで寄付も

吉田:中田さんや久世さん、佐々江さん、山形さんらの協力で実施したクラウドファンディングでは、全国から140人の方々や佐々江地区からも全世帯の約半分の40世帯の方々からも。クラブ関係者の親戚縁者や友人知人からも多くのご支援も。あうるゼミナールハウスの岸本勇雄・理事長さんはじめ何人ものスタッフの方々にもご協力して頂いております。皆さんから予想以上に協力を頂きました。過疎化が進む地域これだけのご支援を頂き、勇気を頂きました。感謝あるのみです。

Q:佐々江ささゆりクラブが目指すササユリとは?

吉田:彼ら仲間たちと、本来この地方の花色である淡いピンク色の個体を増やしたいと思っています。ササユリは学名Lilium japonicumでもわかるように日本特産のゆりで、園芸品種にみられる大きくて花色の濃いユリとは一線を画す日本らしいユリが咲く里山風景を思い出してほしいです。先ずは佐々江中に咲かせたいと願っています。
佐々江:今年6月に、小学生を招いた「あたご山野草苑」でのササユリの課外授業で、久世さんが最初にした言葉が「まず皆さん、ササユリの匂いを嗅いでみてください」と言ったのが印象的でした。というのも見たりするのも大切ですが、「香り」は一生涯、記憶に残ると聞いていましたので、小学生らが大人になった時に「ササユリ」の匂いを嗅いだ時に、「あっ、この匂いはあたご山草苑で嗅いだ“佐々江のササユリ”だ」と思ってほしいんです。

Q:ところで、生育で苦労されたことは?失敗もあったのでは

中田:まだまだ試行錯誤の段階で失敗も多く、培養ビンの中にカビが発生するコンタミや、播種した種の発芽率の低さも悩みの種です。順化させた球根を1年後掘り上げた結果が思い通りにいかなく、球根が土中で消滅?してしまったり、思っていた大きさにならなかったりと失敗の連続です。培養ビンの培地養分の割合や実験室の温度管理また、ハウス内の遮光調整や順化時の培養土の配合割合等々まだまだ課題が山積です。

Q:そこまで中田、久世さんらを惹きつける「ささゆり」の存在とは何でしょうか?

中田:私は京都市内で会社に勤めていましたが、睡眠時間は数時間というハードワークでした。もともと自然が好きで、川がきれいで小鳥の声が聴こえて、植物が豊富な佐々江に約25年前に引っ越してきました。中でもあのササユリが放つ芳香や白の花びらに淡いピンクがかった「佐々江のササユリ」に恋をしましたね(笑い)。その頃は今よりはまだササユリが沢山ありましたよ 本当にササユリの匂いを嗅いでほしいのです。そして淡いピンクの可愛らしい花びらを。何時間見ていても飽きませんよ。
私も小学生のころ友達と山で見つけたササユリの甘い匂いとその時の情景は今でも何となく記憶に残っています。メンバーにとって「ササユリ」は香りや色もさることながら、佐々江地区をササユリの里にしたいという「夢」であり、それによってこの地区に沢山の人達が来てくれるという「希望」でもあります。これはメンバー全員の共通した思いです。

Q:ササユリに託した夢は?

中田:「ササユリをヨーロッパへ輸出して皆でベンツに乗ろう!(笑)」です。ベンツ云々は別としても、夢を持って始めたささゆりクラブです。なかなか道のりは遠いですが、夢は希望へと繋がりますからね。アメリカより欧州の方が日本のササユリは好まれていますからね。

Q:後継者養成も課題ですね

中田:南丹市内の小学校で子供らにササユリの栽培を継承していくために出前授業(写真中央が中田さん)も行っています。
久世:事業を継続していくためのクラウドファンディングでの資金も限りがあり、ササユリ球根生産数の安定化や販売先の開拓といった資金面での課題をクリアーしていくとともに、この事業を継続してくれる若い世代の獲得が急がれます。南丹市のふるさと納税の返礼品にも応募したいと考えています

西村:今度は、皆さんの熱い思いをこの「問い語り」で届けるのが私の役割です。ササユリの自然株からの種の収集からバイオ技術を使い育て、それが開花した今年、それまでの道のりは長かった。それが見事に咲いた。淡いピンクのササユリ。皆さんの目が輝いて、体中から喜びの声が聞こえていました。さて日本全国に向けてササユリを広めましょうか。皆さんはこの年末の忘年会を農家民泊の「節恵庵(☎0771・73・5011 南丹市日吉町佐々江)」で「労を労って一献」とか。「(経営の)ケイサン、セツサンよろしく!」

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2021年12月2日RT(709)
編集部 春風

編集部 春風

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