堂々と老いさらばえよ
「煙草を一日何本?」「一本も吸いません」「お酒は?」「一滴も飲まない」「では、男女関係は?」「一切無し」。「では、あなたはなぜ長生きを?」。落語に使われるネタです◆戦後の日本は食文化の向上、衛生状況の改善などで平均寿命が世界の頂点に。高齢者が増え、老人は、「幸齢者」と持て囃されてきました。それが近年、核家族の世帯が増え、若い人々も、非正規雇用など不安定な生活を強いられ、「親の介護」にまで手が回らない状況。老々介護も増えて年金暮らしも余裕もない時代、ますます年老いた方々は肩身が狭い思いも。
NHKの「100分de名著」の番組で「老い」を取り上げた。それは「怯(ひる)むことなく、堂々と老いさらばえよ」という「第2の性」の著者で20世紀の女性解放思想の草分けのシモーヌ・ド・ボーヴォワールの言葉から出発しました◆解説したのは社会学者で東京大学名誉教授・上野千鶴子さん。のっけから「文明社会でありながら、老いた人間を厄介者にして廃棄扱いにする」「つまり、老いは個人の問題ではなく社会の問題なのです」◆上野さんは、番組の中のいたる場面で「老いは文明のスキャンダル」とボーヴォワールの言葉を引用しました◆「だから『老いても若々しくいきましょう』とか『老いても前向きに』とは口が裂けても言いません」「怯むことなく老いを~」と歯切れよいのです。
筆者も今年73歳を迎えます。偏見や差別に対して我々高齢者も“反撃の糸口”を。政治にも社会にも長い間に培った知恵から堂々と主張はもちろん、小言も言いましょう。それが“特許特権”ですから。
(西村敏雄)
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