女は老いても利点があるのよ

 「幾たびか 友を送る日重なりて 辛さを人は 長寿ともいう」。誰が詠んだか忘れました。80歳になる友人が酒を呑みながら、「若いと思っていてもいつの間にか歳をとる。だから見送り見送られるんだなぁ」。しんみり語る◆古代ギリシャやローマでは、「老人は若者の嘲笑の対象」(風刺作家・ルキアノス)でした。劇作家もそれをストーリーに描き、観衆が喝采していた。だから観衆も自分が老いた時には、自分が蔑視した老いを受け入れられなかったというのです。

 女性解放思想の草分けのシモーヌ・ド・ボーヴォワールは、老いの自認には男女の差があるとして、グリム童話を挙げます。「老婆はうさんくさいだけでなく不吉な存在として描かれている」◆ボーヴォワールも実は、50歳の時にある言葉にショックを受けたのです。大学の構内で、女子学生が、「ボーヴォワールって、もう老女なのね!」。それを聞いて愕然としました。社会学者で東京大学名誉教授・上野千鶴子さんは、「彼女もその時、自分ではまさか老女とは思っていなかったんですよ」「ある日突然気づかされる」「他人の眼差しが彼女を別の者に“変身”させた」のです◆でもボーヴォワールは負けてはいません。「女は老いても利点がある」と。「更年期以降、もろもろの禁忌(タブー)が取り外され、踊りに加わり、酒を呑み煙草も吸う。素敵な男性と並んで腰を下ろすことができる」「社会のお荷物とは言わせない存在になる」ときっぱり

 冒頭の友人も、「奥さんが先に亡くなると、ご主人は途端に老け込む。逆の場合、残された奥さんは皆で集まり、おしゃべりなど元気いっぱい!」と◆女性は老いてこそ(夫から)自由を満喫できるのよ!ボーヴォワールが語り掛けているように思います。老いたる筆者のひがみかかなぁ。男性陣いかがですか?

(西村敏雄)

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2022年3月20日RT(615)
編集部 春風

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