古い京町家の小さな庭に
京都の西の外れにある古い町家には
畳二畳ほどの小さな庭があります。
その昔、暮らした人がいました。
地面に白い玉砂利を敷き詰め
ところどころに
少し大きくて形の異なる石を置き
侘びを感じる石の庭にしていました。
寒い日でした。
古い町家で
ずぼらな僕の暮らしがはじまりました。
月日が流れ太陽が暖かくなり
畳二畳ほどの小さな庭に
春が訪れました。
白い玉砂利の地面から
小さな緑の芽が顔をのぞかせました。
それから緑は毎日、毎日、増えました。
少しずつ育つ緑を観るのが
僕の楽しみになりました。
吹く風に心地よさを感じはじめると
侘びの石庭は
元気な緑になりました。
ある朝
黄色の花がとても小さく咲きました。
寂しそうだった
小さな庭と
僕の暮らしに
夏がやってきました。
―春風―
2021年4月15日RT(168)