壊れたおもちゃも宝なんだ!

 「捨てられる寸前のおもちゃがまた動きだす。それを見つめる子供らの目の輝きは今も昔と同じなんですね」。八幡市に住む工学系の会社に勤務していた内藤暁さん(写真中央)はその経験などを生かして「おもちゃ病院」(八幡市社協☎075・983・4450)を同市や京田辺市内で“開設”しています◆「お金を払えばどんなおもちゃでも手に入ります。壊れると親が直ぐに代りを買うんですね」。その子には壊れたおもちゃでも愛着があるんです。だからそのおもちゃが再び動き出した途端、驚きと笑顔が満面に。大事に愛おしそうに抱えて持って帰えって行きます。「壊れたおもちゃでも大切な宝物なんですね」。内藤さんの目は更に細く。

 でも、「こどもの日」の5日、64年の歴史に幕を下ろしたおもちゃ屋さんがあります。「子どもたちの夢の国でありたい」。そんな願いを店名に込めた「青い鳥」(東京都大田区)。朝日新聞が報じていました◆店長の柳田さんも元はこの「青い鳥」の常連でした。小学生の時、月200円の小遣いを握りしめ、数百種類が並ぶプラモデルの前で何時間も過ごしていたそうです。でも、バブルの頃から次第におもちゃの時代にも変化が訪れました。「かつての主力だったプラモデルは、トレーディングカードやアニメのキャラクターグッズに取って代わられた」◆今は、更に高価な電子ゲーム機器などが人気です。その後その高価なおもちゃの行方が気になり、京都市役所の廃品回収の担当者に聞きしました。「いい物はリサイクルショップに。あとは廃棄処理」と◆柳田さんは昔を振り返り、年中店内では子どもたちの話し声が絶えなかったそうです。「店を開けるなり飛び込んできた子どもたちが、お目当ての商品に目を輝かせる」。お金を払う時、「ありがとう」と言って、宝物のように抱えて店を出て行く。「人の心の芯の部分を、おもちゃは育ててくれる。感情を豊かにし、感謝の気持ちを教え、人間関係さえも育んでくれるんです」。ずっと思い続けてきました◆少子化も加わり経営難にコロナ禍が追い打ちをかけました。内藤さんは、おもちゃを修理し蘇えらせる。柳田さんの「青い鳥」は店じまいを。道は違うけれど、二人の心を繋ぐ“もやい”は「子どもが喜んでくれたから、ここまでやって来られたんです」。そんな思いからでは◆閉店の日、かつての常連が親となり、子や孫らを連れてきたそうです。「昔に戻ったみたい。いつもこれくらい来てくれたら、まだできたのになぁ」。柳田さんは冗談交じりに笑って、少し寂しそうに遠くを見つめていたそうです。涙をこらえていたのかもしれませんね◆私の一番下の孫は、お兄ちゃんからもらった動かないおもちゃでも、「むじゅむじゅ」言いながら、嬉しそうに一人で遊んでいます。子供は木の葉一枚、蟻さんとでも時間を忘れるほどの遊びの名人ですからね。

(西村 敏雄)

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2021年5月10日RT(234)
編集部 春風

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