紗帆MRI検査に行く①
「紗帆ちゃん日記」第4回
曇り空の5月の日、時間は午前6時30分。「紗帆ちゃ~ん、朝からゴメンねー。ちょっと検査してもらいに行こうねー」紗帆の返事はなく、車の窓から外の景色を眺めている。行先は名古屋大学小児科で紗帆の脳のMRIを撮る予定で2時間ちょっとのドライブ。道中紗帆はちょっと退屈でずっと同じ姿勢なので半べそに・・・慌ててアンパンマンの音楽をかけると、涙をポロポロとこぼしながらも徐々に笑顔になる様子がバックミラー越しに映っている。
そんなこんなで大きなトラブルもなく無事に到着。紗帆をバギー(車いす)に乗せて、こっちかな?あっちかな?大きな病院を散策して病棟へ。障がいを持った子のMRI検査は大変で、動く事が許されないので睡眠導入剤を使用して熟睡させてからの検査になり、薬の量によっては目が覚めても意識がもうろうなのでその日は入院という事もある。受付を済ませて準備された部屋で少しだけ休憩。「紗帆ちゃんお疲れさん、がんばったね。」「頭の検査するからねー、寝れるかなぁ」「パっと寝て、パッと検査して、パッと起きて家に帰ろうね~」無理矢理紗帆のほっぺたを両手でムギュっと挟むように抑えて、顔を逸らせないようにして顔を近づけて訴えてみる。ムギュっと押しつぶされたほっぺたに、とがった唇とキラキラした目でパパをしっかり見てくれている。言葉はないけど・・・。大丈夫かな・・・。
そうこうしていると「これを飲ませて下さいね」と看護師さんが睡眠導入剤を持って来てくれた。そもそも上手くごっくんして飲んでくれるか・・・嫌だと感じたら飲み込まない頑固さも持っているのを知っている。紗帆を横に抱き抱えてスポイドを使って口にいれてみる。「ごっくんしてよ」「・・・」「紗帆、ごっくん!」「・・・」喉元がゴクリ・・・ゆっくり動くのがわかった。良かった、何とか飲んでくれた。これで後は寝てくれるか・・・目はパッチリ開いたまま、ちょっと寝ないかも・・・と思った5分後、「チーン」ノックアウト!という表情で落ちてくれた。すぐに看護師さんを呼んでMRI検査室へ。立ち入り禁止の検査室を覗いてみると、13歳にしては小さい紗帆の体を大きな白い機会が今にも紗帆を飲み込もうといわんばかりにしている。「はい、お父さん下がってあちらでお待ちくださいね」ドン!と大きな鉛の分厚い扉が閉められ、磁場発生中の赤いランプが点灯した・・・。
(谷岡哲次)
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