愚かな旅人として放浪するより外にない
このみちや
いくたりゆきし
われはけふゆく
しづけさは
死ぬるばかりの
水がながれて
九月九日 晴、八代町、萩原塘、吾妻屋(三五・中)
私はまた旅に出た、愚かな旅人として放浪するより外に私の行き方はないのだ。
七時の汽車で宇土へ、宿においてあつた荷物を受取つて、九時の汽車で更に八代へ、宿をきめてから、十一時より三時まで市街行乞、夜は餞別のゲルトを飲みつくした。
同宿四人、無駄話がとり/″\に面白かつた、殊に宇部の乞食爺さんの話、球磨の百万長者の慾深い話などは興味深いものであつた。
種田山頭火「行乞記(一)」から抜粋
2021年9月19日RT(145)