貧しき者への施す心とは

 軽妙な風俗関連のエッセイストで知られる嵐山光三郎さんの本を図書館で借りた。「人生勝率五割」◆江戸時代、褌(ふんどし)に銭を包み、道端にわざと落として厄払いをした。光三郎さんによると、「ささやかな厄災を自身で用意して落とす」のです。こと厄年のかたは是非◆井原西鶴の「日本永代蔵」では、なんと、400両を厄落としに大奮発した大名もいたそうです◆豊臣秀吉にいたっては目に入れても痛くないほど溺愛した嫡男の秀頼の幼名を「拾丸(ひろいまる)」と称し、生まれてまもない愛児をいったん往来に捨て、そして拾い上げた。その儀式にちなんでの命名だ◆「儀式」とは言え、溺愛した我が子を捨てる。「これを経験させることで不運を出し尽くす」「前途の幸福を祈願する」◆長い人生、適当に不運がちりばめられた前半生があれば、「幸運が用意された後半生が待っている」。一人勝もひとり負けもない「勝率五割」なのですね。

 さて、「喜丸(きまる)」という名前。この「すろーかるニュース京都」で取り上げた京都市右京区・京北細野で、いのししラーメンで知られている「キャプテン」を営む野村耕司さんご夫婦のお孫さんの名前です◆「覚えやすい名前に」との思い。それとご夫婦の心の支え(天理教・ひのきしん)から、「自発的な行為で“喜び”を体感し~」「見返り求めず、人への思いやりを」という願いを込めた。それを父親が、「皆を“喜”ばせ、〇く生きるように」との漢字を当てはめた“合作”。

 そもそもこの二人の名前の「丸」とは禅宗では、「〇」「円・円相」を示し、「金品や名誉などの執着から解放された心を表わす」という◆「拾丸」は儀式といえいったんは往来に捨てられ、「喜丸」は見返りを求めない人間になれと、名付けられた。二人の「丸」とい名から仏教の「喜捨(きしゃ)」という言葉が思い浮かんだ。「喜んで弱い人や貧者へ施しをする」という意味です。「人生勝率五割」どころかすべて吸い取る強欲な金権主義の政治には程遠い言葉◆勝手な解釈を許していただけるのならこの二人は、時代こそ変われ、「喜捨」の心を背負って生まれてきたのかもしれないと思うのです。

(西村敏雄)

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2022年1月21日RT(488)
編集部 春風

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