必ずや誰かの希望になれば

 「困難を希望に変える力~3・11 10年後のことづて」(3・11を語りつぐ会=☎090・2889・3690)。今回はこの本を紹介します。著者は宮城県仙台市在住の朗読家でアナウンサーをしている渡辺祥子さんです。語りつぐ会代表でもある◆来月11年目を迎える東日本大震災。「震災後に一生懸命に生きる人々の姿などを通して必ずや誰かの希望になれば」。渡辺さんの思いです◆先の大戦のナチスドイツの強制収容所でも、多くのユダヤ人の命が奪われました。「夜と霧」の著者・ヴィクトール・E・フランクル自身も、収容所で死線をさ迷う時もありました。「人間は困窮と死にもかかわらず~人生にイエスということができる」。こうしたフランクルの言葉が随所で被災者を支えています。

 先ずは、菊池里帆子さん(宮城県名取市)です。小学校の新任の先生を迎える着任式でのこと。児童代表で挨拶しました。当時、学校の現場では津波体験を話すのは慎重な時期でした。でも「その体験(津波)を越え、もっと良い町をつくれるように応援してくれる人々への感謝を忘れずに精一杯生きていきます」◆次は工藤真弓さん(宮城県南三陸町)。保育園に向かう途中で息子さんの由祐ちゃん(当時4歳)がつぶやきました。「ゆうすけには どんぐりなくなっていない   こわれたふるさとがあるんだよ」。心が折れそうになっていた母親の真弓さんはびっくり。幼子が親に希望を与えてくれた一言でした。フランクルの「人生からの問いかけに責任をもって応答する」。わずか4歳の坊やが言葉に。嬉しいね、ありがとう◆徳永利枝さん(宮城県石巻市)。大津波でかつての面影が全くなくなってしまった瓦礫の中の実家で佇んでいました。その時に「山や空が『さびしい』と言ったのが聞こえたんです」。はっとした徳永さんは2株から花を植え始め、今は「ローズガーデン」を立ち上げています。「さみしい」との自然からの言葉に応えたのです。

 登場する皆さんをご紹介できないのが残念です。このコラムの終わりに、菊池里帆子さんに再登場を。「里帆子」という名前は、おじいさんが、「ふる里に帆を上げて欲しい」と思いを込めてつけてくれたそうです◆フランクルの、[生きることを諦めない。如何に人生に責任を持つか]など、勇気の言葉を支えにこうして前を向いて歩む人々の「思い」をこの本を通して「ことづて」たい、そう思います。

(西村敏雄)

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2022年2月16日RT(645)
編集部 春風

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