「悲しみ」ではなく「希望」を

 一年の心を洗うとき、「悲しみ」が浮かぶのではなく、「希望」が浮かぶようにと念じつつ◆散歩がてら見かけた親子連れの鹿、至るところに四季の草花が。小川の上を明滅しながら飛ぶ蛍などコラムの素材に恵まれた京都・京北の地での生活◆思えば、記者時代から、文字をならべ、言葉を紡ぎながら文章にしてきました。でも、文字をみるのも書くのも嫌になる時があります◆近々では大阪・北新地での放火事件。誕生日を間近に控えた娘さんら、最期の言葉さえも家族や恋人らに残せず逝った25人◆残された遺族らの声や映像を見るたびに、“筆記道具”のパソコンさえ見るのも嫌になるのです◆でも26日、NHK・BS、2019年12月アフガンで非業の死を遂げた医師・中村哲さんの「良心を束ねて河となす~医師・中村73年の軌跡」を見ました◆多くの難病患者を抱えるアフガンなどで病院建設。多くの部族長を説得しながら、大干ばつの大地を緑地に。その上を飛行する攻撃用米軍ヘリを見ては、「銃に代えて鍬や鋤を」「医療メスより井戸を」と自らブルドーザーを繰っていた姿です。

 悲しみもありました。この間、日本に残してきた10歳になる息子さんを亡くしました。悲しみのどん底の中で、「自衛隊派遣は百害あって一利なし」。ざわめく国会で静かに訴えました◆激流のクナール川からの水を引いて乾いた大地に緑が蘇った時でした。大歓声をあげる住民らから少し離えたところで哲さんは一人たたずんでいました。~それは亡くなった我が子への約束~「見とれ、おまえとの約束は 命がけでやる あの世で待っとけ」~だったのです◆「平和とは理念ではなく現実なのです」。そう語った哲さんは、いま、息子さんと二人で、「悲しみ」を「希望」へと繋げる勇気を我々に残してくれた、そう思っています◆皆さん良いお年をお迎えください。

(西村敏雄)

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2021年12月30日RT(549)
編集部 春風

編集部 春風

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