巣ごもり状態の中で

 この2年にも及ぶコロナ禍で「人が集まる場」自体がほとんど機能しなくなり、随分落ち込みました。どなたでもそれぞれの場で経験されておられますが、こういう気持ちを表現できることをありがたく思います。孤独で黙って耐えていらっしゃる方が沢山おられる中で。
                  
方丈記、平安時代末期           
 『前の、かくの如く、からうして暮れぬ。明くる年は立ち直るかと思ふほどに、あまりさへ疫癘(えきれい)うちそひて、まさざまにあとかたなし。~』
 1182年、前年の飢饉がおさまるかと思えば、それに追いうちをかけるように疫病が流行ったんです。世界の歴史は文明の進化と共に感染症の歴史であるともいえます。人が動き、物が動くと疫病が伝わる。日本では古くは仏教伝来と共にインドから疱瘡が。100年前のスペイン風邪は船で。終息までに3年かかりました。今回は空の道からやってきました。

800年後の今
 方丈記の時代に比べ、病院があって、新聞、テレビ、電話と今の方が断然安心安全と思われますが、果たしてどうなんでしょうか。
 何かぎすぎすしたものが新型コロナやそのワクチン接種と共にやってきて、接種、非接種の間に壁が。振り回されそうになります。まるごと館に来られる方々にはそのどちらの方もいらっしゃいます。皆さん今のこの時を共に生きる一人ひとりで、誰だって誰かにとって大切な存在です。まるごと館にとってもです。どなたのお話も聞いてきて、尊重し合えたらと切実に思い、そこに結構心を砕いて毎日を送っています。
 テレビ、新聞では感染者数等を毎日掲げます。それを見たら動揺するしかありませんよね。「こわい」と思い、「これで安全になる」と思ってワクチンを受けた方がその日に亡くなられたり、副反応で長い間苦しんでいる方が多数おられますが、表立って報道されることはほとんどないです。多分ご存じない方も。また、感染しても入院できないために自宅で苦しむ方が多く、亡くなられる方も日々報告されます。これは決して他人事ではありません。また、悲しいことに、子どもの世界でも未だに感染者に対しての非難があると聞きます。だから、いつまでも不安で落ち着かないのです。

それまでのまるごと館は      
 講習会がない時でも、散歩途中での休憩に、コーヒーを飲みに来られたり、知らない方どうしが知り合い、話が弾むというのが当たり前でしたから。大声で笑ったり、皆でいると居心地がよく気持ちが解き放たれます。そんな日々でした。皆さん大切な仲間で、今書きながら懐かしくなってしまいます。

2020年12月26日まるごと館納めにマスクしながら

今の状況を長明さんは
 新聞記者顔負けの長明さんです。きっと、報道されることが今の状況を正しく伝えているのか、人々の苦しみを、実態を曇りない目でみつめているのかと言うでしょう。そして、感染症以上に人間の対応がそれでいいのかと。
 何が正しいことなのかよくわからない2年間でした。それはまだ継続中ですが、ただひとつ言えることは、新型コロナがそれまでの人と人の関係性を問うているような気がするんです。人と人がつながっていてそれに耐えうる関係なのかどうかを。以前より来られる方が圧倒的に少ないまるごと館で、私はそんなことを思いながら日々過ごしています。
 そして、このコロナ禍を日々身を粉にして働かれる方々には本当に頭が下がります。あなた方がいらっしゃるから、私は生活できているんですと。

(八幡まるごと館 上谷順子)

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2022年3月1日RT(312)
編集部 春風

編集部 春風

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