おとうさんにもらったやさしいうそ
「おとうさんはちょっと とおいところでしごとすることになったから、おかあさんとげんきですごしてね」。この書き出しで始まる作文に目がとまりました。2月26日付けの読売新聞(37面)に「日本語大賞 入選作」の発表記事です。テーマは「心にひびいた言葉」。茨城県に住む佐藤亘紀(こうき)君(小1)の作文です◆作文を紹介します(一部抜粋)。「おとうさんはちょっと とおいところでしごとすることになったから、おかあさんとげんきですごしてね」「そのときぼくは2さいでした。ぼくはおぼえていませんが、おかあさんのすまほにいつまでものこっているので すきなときにきけます」◆「このことばがぼくのこころにひびいたのは、じつはおとうさんがうそをついたからだったのです」「このことばの1しゅうかんご、おとうさんははっけつびょうでしんでいました」「うそはふつうよくないけれどこれは、おとうさんがぼくのためについてくれたやさしいうそだとおもいます」◆続きがあります。「いつかよるおそくにドアのまえで『かえってきたよ』といっているおとうさんにあいたいです こうおもえるのもおとうさんのやさしいうそのおかげです」「おとうさん、うそがばれているよ!めからなみだがちょとだけでているし~でもぼくはだまされているふりをつづけようとおもいます」「おとうさんがうそをついてくれたおかげで、ぼくのこころはつよくなれています」◆そして最後に、「これからもおとうさんのことばをまもっておかあさんとげんきにすごしたいです。おとうさん、やさしいうそをありがとう」
長くなりました。亘紀君のこのひらがなで書いた作文を目にして暫しだまりこくってしまいました。僅か6歳の子どもがお母さんのスマホに残された声を聴きながら、父親に思いをはせ、悲しみながらも、「おとうさんにもらってやさしいうそのおかげでこころはつよくなれています」に「だまされているふりをつづけようとおもいます」と誓っていたんですから・・◆お父さんは目には見えないけれど君の心の中でづっと生き続けているんだね。お父さんもこの作文を読みながら「よし、亘紀を驚かせてやろう。夜にドアを開けるから」と言っている気がします。ありがとう亘紀君!
(西村 敏雄)
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