熊さん、出番ですよ!
コロナ禍。自宅で過ごす方々の心身の健康状態が心配です。更にご夫婦や親子関係など家庭で、お互い息苦しささえも感じておられる方も少なくないのではと思っています◆さて、少しだけ落語の世界を覗いて見ませんか?「免疫力を高める」と言われています。古今亭志ん朝さんの「崇徳院」を聴きましょうか◆ある日、喧嘩っ早いガサツ者で通っている熊さんが、出入りの大店(おおだな)に呼ばれて行くと、若旦那が今にも死にそうな顔つき。「医者に聞いても何が原因か分からないと言われた」と。それで親しい熊さんなら、と呼んだという。熊さんが聞きました。「若旦那、最近の食べ物や梅雨入りで何か体調を崩しては?」。でも首を横に振るだけ。えぇと・・「ひょっとして隠していることでもおありじゃ・」。若旦那は恥ずかしそうにして中々、口を割りません。が、ついに消え入りそうな声で「恋煩い~」と◆思わず熊さんが噴き出しました。「恋煩いがあるてェ話はよく聞いてますがねェ」「その病にあった人に会うのはあっしぁ、初めでなんでさ」。熊さんの生きている世界には「恋心」なんてものは存在しないんですね。若旦那の切なくロマンチックな恋物語も、がさつな熊さんの言葉でほとんどミもフタもない話になってしまいました◆若旦那は、私を茶化していると思い、「元気だったら、熊さん、ぶつよぉ!」と声を荒げたのも無理はないですね。それでも若旦那は熊さんに救いを求めたのです。いや、熊さんだからこそ救いを求めたのかも知れませんね◆熊さんのばかっ話を聞いているうちに、若旦那は「あぁ、何となくすっきりしたよ、ありがとう」と。くぐもっていた心の窓を開けてもらい気が楽になるというお噺。
ある心理学会主催の「傾聴講座」を受講したことがあります。「悩みを話す人に対してはただ『うなずく』『じっと相手の目を見つめ相手が話しやすい場を作る』と講師が言っていました。確かに◆でも本当は熊さんのように、ガサツながらも時には泣いたり、また凄んだりする“人間味”が人のこころを開くこともあるんだなぁと。たわいもないお噺ではありますが、ほんのひと時をゆるりと・・
(西村 敏雄)
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