ふまれてたんぽぽ!

 「ふまれてたんぽぽ ひらいてたんぽぽ」。漂泊(放浪)の俳人、種田山頭火の句です。道ばたや野原一面に咲くタンポポは、踏まれ花のかんざしを作るために摘まれてしまう運命にあるのかな?と思えます◆でも必ず春の日を浴びて花開く。この句を愛した俳優さんがいました。川谷拓三さん(享年54)です。いつも顔をくちゃくちゃにして「ニヤっ」と笑う姿が目に浮かびます。中卒で京都の東映撮影所に入った川谷さんの映画俳優としてのスタートは散々なものでした。「通行人役」の後は、「ひばり捕物帖 振り袖小判」では死体役。その後も殺され役専門で1日3回も死体を演じていたことも◆頑固者でひねくれ者、何をするにも「のろい」と罵倒され、大部屋では先輩からいじめられ、いびられる度に「何度、辞めようかと思った」。でもそれを思いとどまらせたのは「いつか役者として一人前になりたい」との一念でした◆でも通行人、殺され役ばかりが続き心が荒んでいったある日。爆発した。飲み屋さんで、酔った勢いで乱闘騒ぎを起こした。酔いが覚めた翌日、上司から「首を洗って待っていろ」と言われ「もう俺の人生は終わりだと思った」そうです。ですが謹慎2ヶ月で済みました。「これからは通行人でも死体でもどんな端役に過ぎなくても、その役になりきろう」。心に誓いました。

 そんな彼をじっと見ていた監督がいたのです。日米合作映画「トラ・トラ・トラ!」などの監督・深作欣二さんでした。1973年(昭和48年)から公開された「仁義なき戦いシリーズ」は邦画史に残るヒットを記録。シリーズで、川谷さんはチンピラ役に抜擢されたんです。ポスターにも「川谷拓三」と。凄み、蹴られ殴られた。観客から「本物のチンピラを使うとはけしからん」とクレームがついたそうです。チンピラになりきっていたんですね◆「ビルマの竪琴」でその演技力を評価され日本アカデミー賞の優秀助演男優賞にノミネート、NHKの「歴史ドキュメント・桜田門外の変」(1993年)では主役の関鉄之介役を演じ尊王攘夷の水戸藩士という難しい役柄もこなすほどに◆「とことん納得がいくまで練習しました」「器用でない僕にはこのやり方が一番に似合っているんです」と。~ふまれてたんぽぽ~大好きな俳優を目指した川谷さんがニヤっと笑っている気がします。

(西村 敏雄)

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2021年3月16日RT(145)
編集部 春風

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