キラキラ光る

朝の仕事が終わったから
折り畳み自転車で
小さな旅に出かけました

旅の目的は
音をつなぐ一本のケーブル

アーケードの商店街を軽やかに抜け
なだらかな坂道でペダルを踏みしめ
ビルと車の列を横切って
小さな車輪で東へと進みました

むかしむかしその通りには
お寺がたくさん並んでいました

それから少しむかしになると
その通りは
キラキラ光る電気屋さんで
賑わいました

久しぶりに訪れた
その通りには
コンクリートの壁と柱だけになった
暗くて大きな電気屋さんがありました

旅の目的は
音をつなぐ一本のケーブル

小さな車輪で北へと向かいました
かつて仕事部屋があった町へ

住宅街にあるかわいい電気屋さんは
今も小さく光っていました

「音をつなぐケーブルを探していて」
「何に使うのですか?」
「素敵な音で映画を観たいと思ったから」

お店の奥の木の引き出しから
一本のケーブルが現れました
ビニールの袋に大切に守られていた
薄い緑と黒のケーブルが…

「これでいいですか?」
「はい。これで、つながります」
「それは良かった。では、差し上げます」

小さな旅が
キラキラと輝きました

―春風―

2021年4月27日RT(134)
編集部 春風

編集部 春風

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