いてくれるだけで宝物です
「好きなこと、楽しいことをたくさんやって笑顔を輝かせてください。それが精いっぱい生きるということです」「みんなは、いてくれるだけで宝物です」◆福岡市内の小学校で生徒らに、娘さんのことを語るお母さんの記事(西日本新聞)が目に止まりました。白血病で7歳の娘さんを亡くしたお母さんが、小学4年になったかつての同級生たちを前に「精いっぱい生きる」というテーマでお話をしたのです◆闘病中もいつか学校に戻ると信じて勉強していたこと、みんなの手紙が治療の支えになっていたことなど・・。ですが、お母さんがこのお話をするまでには時間がかかりました。娘さんが亡くなった後も、「先生たちや同級生ら皆さんが娘を“クラスの仲間”として受け入れ、家族に寄り添い続けてくれ、その絆が家族の心の支えでもありました」。やっと娘さんの“祈り”が通じたのか、笑顔でお話されたのです。
娘さんは、3歳で急性リンパ性白血病を発症。抗がん剤治療で少し治り、憧れの小学校に入学した2017年の8月に再発したのです。「娘が入学式でおしゃれをしたり、校庭で一輪車を楽しんだりしていたんです」。病院で臍帯血(さいたいけつ)移植を受け、翌年4月に退院。復学に向け自宅で療養していたときに再々発が判明し、4か月後に亡くなりました。学校に通ったのは1年生の4カ月間だけでした◆お母さんは、亡くなる8日前に小児がんの子を支える募金活動「レモネードスタンド」で娘さんが街頭に立ったこともお話しました。「娘を失った悲しみは消えませんが、精いっぱい生きたことを家族は忘れていません」◆そしてお話の最後に、「娘は入院中も一生懸命に勉強していました。それは『人の役に立ちたい』と思っていたからなんです」と、“クラスの仲間”としてその絆を大切にしてくれた同級生らに、娘さんの願いや夢をメッセージとして伝えました。
この記事を読みながら、ふと小林凛君の俳句が頭に浮かびました。「手のひらに 小さな命 春の使者」(「ランドセル俳人の5・7・5」=ブックマン社)。障害を持ちいじめにあいながらも凛君の生きる希望は、「俳句を詠むことで“人との絆”を持つことです」と。凛君から絆という強い祈りを感じます◆お母さんのお話や、凛君のこうした一句は、子供らだけでなく大人にも、「生きる勇気や人との絆の重さ」「人生にとってかけがえのないもの」をもたらしてくれると思うのです。目がうつろな答弁を繰り返すこの国のリーダーにも届けたいお話です。
(西村 敏雄)
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