京都府立ゼミナールハウス理事長 岸本勇雄さんに聞く

 私ら家族が八幡市から京都・京北に移り住んで約1年数か月。京北には幕末期に丹波国桑田郡山国郷(現京都市右京区京北)の農兵隊で組織され、戊辰戦争を戦った「山国隊」や明智光秀の周山城址、府内有数の古墳群、北朝初代の光厳天皇が住んだ「常照皇寺」などの由緒ある古寺など歴史遺産が多くあります。また夕暮れ時の「北國富士」、京北の街並みが雲海に浮かぶ景色を堪能できる「栗尾峠」、かつては御所の建材として使われた北山杉を筏で運んだ大堰川、近隣には、茅葺屋根農家の集落「美山」、そして桜や山藤など季節の花々など自然に囲まれた景観に圧倒されます。しかしながら、「少子高齢化」の波がこの地域へ押し寄せています。最近は、都会の喧騒から逃れてこの自然豊かな地へ「夢や思い」を求めて移り住んでいる方も少なくありません。陶芸家、写真家、お蕎麦屋さん、ニュービジネスを展開しようとする方々です。そこで「地域の魅力の伝承、発掘、発信」を、地域の方々や移り住んできた方々のお力をお借りしてお伝えしたい、と思います。
(西村 敏雄)

【第1回目】

 昭和51年9月に、生涯学習の拠点として設置された「京都府立ゼミナールハウス(愛称・あうる京北)」の理事長・岸本勇雄さんに1回目のインタビューをお願いしました。2016年4月から就任されて6年目を迎えた岸本さんが今後、どのような位置づけで、新たな取り組みをしていかれるのかなどをお聞きしました。42年間お勤めされた京都府庁での経験などを活かしながら、「あうる京北は京都府の重要な施設です。地域の人々との連携や豊かな緑の中での学問等、生涯学習の拠点としてますます発展するように微力ですが、頑張っていきたいと考えています」と語ってくれました。また、インタビューの最後には、府庁勤務定年前に、「思いもかけない仕事に就いたある仕事」に情熱をかけた感動のお話も・・是非お楽しみに。

西村:地元(美山)ご出身なのですね

―そうなんです。美山町深見の出身です。谷あいの小さな集落で冬は雪もよく積もり、中学生の時には“京都のチベット”と言われていたんですよ。今も家並みが綺麗で自慢です。裕福ではありませんでしたが、一人前に育ててもらい父母に大変感謝しています。父は山仕事を中心に色んな仕事をしていました。戦争でシベリアに抑留され大変苦労した人生でした。父からは「何でもやったらよい。何でも勉強だ。良いことも悪いこともあろうが、それをどう生かすかを考えろ。」と教えられました。探究心が旺盛なのはそのおかげかもしれません。母は大変優しい人でした。嫁いできてから結構苦労したようです。母からは「人に対する気遣い、優しさ」を教えてもらいました。

西村:失礼ながら岸本さんの笑顔にはそのご両親の思いやりが・・

―3人兄弟の2人目で姉と弟がいます。温厚な性格だと思いますが、結構頑固なところがあります。直さないといけませんね(笑い)

「京都府立ゼミナールハウス(愛称・あうる京北)」の理事長・岸本勇雄さん

西村:では本題のあうる京北に。地域の方々の協力も大きな力になっているのですね。

 ―この地に設立されたのは、京北町の方々が土地を拠出されるなど、熱心な誘致活動をされた成果と聞いています。また、あうる京北の管理運営は、設立当初から地元の協力会組織が関わっています。昭和52年10月には府と京北町の出資により財団法人化され、その後美山町も参画し現在に至っています。職員は地元京北・美山の皆様がほとんどです。ゼミナールハウスは、宿泊・研修等の場のほか、会議や食事の場としてもご利用いただけますとともに、毎年文化事業(生涯学習事業)も多数実施しておりますが、その実施に当たっても多くの地域の皆様のご支援・ご協力をいただいています。

西村:「森の京都」のエリアとして大学や関係団体との連携。その他の文化事業なども

―府内大学のほとんどが利用してくださり、理事・評議員にも多数の大学にお世話になっています。年間利用の6割以上が学生です。毎年、2月に新年度の事業を組み立てます。「森の京都」ということも意識しながら、令和2年度ですと、山城探訪スペシャル(周山城址等登城と講演会)、手に乗る盆栽体験と山野草の森、デジカメ教室、陶芸教室、水彩画教室、チョークアート教室、ハーブとアロマ講座、ピアノ演奏会、子ども環境劇場、美山巨大杉ハイキングとラフティング、バロック音楽会、ツクル森、もみじ遊山・新北桑展、日本茜ワークショップ、LOGIN、日本赤十字社救急員講習会、さをり織教室、3階の展示ロビーでは、1か月単位で写真展や切り絵作品展、絵画展、福祉施設作品展等などイベントや講習会が盛りだくさんです。残念ながらコロナにより今は多くの事業が実施出来ませんが・・

西村:多彩ですね。それで着任されてから特に力を入れていることは

―施設のPRの強化です。もっと利用者数を増やしたい。利用していただいた皆様から「こんなところにこんなよい施設があるのを知らなかった」という声を沢山お聞きします。せっかくの立派な施設ですので、より多くの方に知っていただき、利用していただきたい。また、京北を多くの人に知ってもらい、来てもらいたいと考えています。200人収容の大ホールがあり、150~180人の宿泊が出来、BBQや宴会も出来ます。個人・グループでの利用も可能です。利用料は大人1泊3千円弱です。wifiも完備しています。グループ利用の場合は、JR二条駅まで送迎いたします。令和2年度には、1号ゼミ室(40名収容)が京北の木材を利用して机や椅子を作り替え、明るく創造的な空間に生まれ変わりました。フランス人家具デザイナー創作の繊細なベンチや椅子がアクセントになっています。

西村:「BBQの後の掃除も率先して」「職員にも上から目線ではありません」と職員の方が・・

―いやいや、そんなこと・・少ない人数で当たり前のことですね。一緒に働いているんですからね。職員が希望と誇り、自信を持てる職場にしたい、と考えているだけなんです。楽しく、仲良く、明るい雰囲気の職場はいずこも同じです。

左から、職員の藤田さん、田中さん、渡部さんの”3人娘”

西村:あうる京北の将来像を

―コロナワクチン接種が進み、外出自粛が解かれ、人の往来や自由な会話が出来る状況になって、多くのお客様が戻ってきてくださること、新しい利用者が増えることを期待しています。学校の課外活動に、合宿や自主研修の場に、企業・事業者の利用の場に、都市と農村の交流の促進の場にご利用いただき、「利用してよかった、是非もっと利用したい」と言っていただける施設にしていきたいと思っています。

西村:「あうる京北友の会」「西の鯖街道協議会」などを簡単に

―友の会は、昭和59年4月に、あうる京北が実施する文化活動を推進協力しようということで地元有識者により設立されました。会報「友の会だより」の定期発行、文化芸術活動への参加奨励、会員研修旅行など活発に事業展開されています。最大時は800人程度の会員だったと聞いています。

 「西の鯖街道協議会」は、ゼミナールハウスの若狭古道復活の研究を基に、京北町、美山町、福井県高浜町、おおい町の府県を越えた4市町の行政と観光協会等による広域連携組織として結成され13年目に入りました。「京と若狭を結ぶ歴史街道・西の鯖街道」の知名度を高めるために、街道沿線の各市町が連携及び交流を通し地域活性化を推進ししています。具体的には、両府県や他の団体からの補助金等をいただき、古道整備、特産品等PR、観光キャンペーン、西の鯖街道歩きなどの文化事業等を実施しています。西の鯖街道は近畿風景街道に認定されています。2018~2020年度は、京北商工会会長が「西の鯖街道協議会」の会長をして下さり、ゼミナールハウスが事務局を担当し、また独自に創立40周年記念事業として「峠越え-西の鯖街道」を出版しているほか、鯖街道歩きや歩くための鯖街道読本の出版も行っています。

西村:さてさて、府庁時代、長かった総務畑から何と、4年間の「競輪」関連の仕事に!

―本当にびっくりですよね(笑い)。入庁してからずっと内部管理部門で勤務しました。中には敗戦処理のような仕事もありましたがいずれも多くの仲間や上司に助けられ、楽しく仕事をさせていただきました。最後の勤務場所が向日町競輪場(京都府自転車競技事務所)でした。公営競技は、そこで得た収益を一般会計に繰り入れる目的でスタートしています。向日町競輪場は老朽化とお客様の高齢化、減少により当時、廃止云々という話が聞こえていましたので、またしても敗戦処理かと思いながら着任しましたね。

西村:当時は財政難などから公営競輪廃止が。その中で「向日町競輪は廃止しません」と。ファンの方も選手も喜んだでしょうね

―最後の最後まで努力して、それで駄目ならと思いましたが、京都の競輪選手と話をさせていただくと、全国でも屈指の、正にトップ9に入る選手が3人もいたんですよ。この選手達から練習の場、活躍の場を奪ってはいけない。自分たち運営側の努力が足りないのだと思いました。当時はまだネット投票は主流ではありませんでしたので、売上を伸ばすには自場のレースを全国の競輪場で売ってもらう必要があり、全国の競輪場に泊りがけで出かけ膝附合わせ、営業しましたね。自場のレースに如何に多くのよい選手を集めるかも重要なことでしたので、関係団体にも足しげくお願いに行きました。自腹でお土産を持って・・。かみさんからは「早く違う職場に変わってもらわないと家計に響く」と怒られましたが(笑い)。全国的に有名になった京都の選手も含めての皆さんとは、今でも連絡を取っているんですよ。

西村:(競輪では)風を避けるために先頭には出ない。その先頭の後について2番手が第4コーナーあたりから「まくり」、つまり一気に飛び出し追い抜くんですね。

―そうです!最初、それを見たときにグループの先頭の選手にとっては中々厳しい競走なんだと思いました。先頭の人より弱い人でもスリップストリームを使って最後に番手(2番目)の人が抜き去ることが出来るわけですので。車のF1レースと同じですね。時速7~80kmの世界で、みんなが駆け引きです。応援している選手が一瞬に駆け抜けるとき~私もワクワクどきどき、嬉しかったですよ。あうる京北の向かいの京都府立北桑田高校は私の母校、自転車競技で何度も全国制覇している強豪校、競輪選手になって活躍している人もいます。高校生の皆さんの活躍、競輪選手の活躍、楽しみにしているんですよ。

西村:大変失礼ながら、インタビューの締めに、岸本さんの府庁時代の”最終コーナー”で見せて頂いた「まくり」の情熱人生・・理事長としてもこの情熱を! 終始笑顔で、熱く語って頂き、ありがとうございました。

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2021年5月27日RT(224)
編集部 春風

編集部 春風

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