下鴨納涼古本まつり開催という記事を読んで

■ここ数日で気になった京都のニュース

 「約80万冊の古書が集まる『下鴨納涼古本まつり』が、8月11日から京都市左京区の下鴨神社・糺の森で2年ぶりに開かれる」(京都新聞より)

■ニュースを読んで調べたこと

 京都の古書街の歴史を調べてみると、江戸時代中期から書店街だった寺町通が徐々に古書街に変遷、その後、1897年(明治30年)に京都帝国大学が設置されると、川端丸太町から熊野神社までの丸太町通に古書店が集まり、最盛期には20店以上が軒を連ねたそうです。大正時代になると、河原町通の三条から四条間に古書店が増え始めました。

 マルチメディア時代が到来し、古書がインターネットを介して売買される世の中になると、街の風景から古書店が急速に姿を消し始めました。それでも京都は古書店がまだまだ多いところで、人口10万人あたりの古書店数は全国で最多。最近では、若者たちが独自の感性でユニークなスタイルの古書店にチャレンジし、少しずつですが新たな展開が見え始めているようです。

■そして思ったこと

 以前、パリに少しの期間滞在していたことがあります。日課は、セーヌ川沿いを散策しながら、ブキニストと呼ばれる露店の古書店を見て回ることでした。

 ブキニストの始まりは16世紀だそうです。1445年頃にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷術を発明したことで出版事業が活発になり、不要な本までが大量に生産されるようになりました。これらの本の販売を始めたのがブキニストと呼ばれる人たち。ちなみに、ブキニストという言葉は、「価値のない本」を意味する古代フラマン語のボエカンから派生した言葉だそうです。つまり、“価値のない本を売る人たち”ということです。

 1606年にセーヌ川に架かるポン・ヌフが完成すると、ブキニストたちは、人通りの多い橋の上に集まりました。ところが19世紀の後半、セーヌ県知事のジョルジュ・オスマンがパリ改造を実行し、ポン・ヌフからブキニストたちを退去させます。行き場を失ったブキニストたちは、セーヌ川沿いで店を開くようになり、1859年には決められた場所での営業が正式に認められたそうです。

 セーヌ川の両岸に並ぶブキニストの深緑色の売店は、街の風物詩としてパリ市民に愛されるようになり、「世界一大きな露天書店」としてパリを代表する名所になりました。現在、ブキニストは226軒(正式登録)で所有する店舗は約1000軒。1991年には世界遺産に登録されました。

 500年以上の長い時を経て、 “価値のない本を売る人たち”は、世界の宝物になりました。今回取り上げた記事を読んで、思ったことです。

―春風―

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2021年8月8日RT(197)
編集部 春風

編集部 春風

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